17年4月。破綻から数えると3期目の17年度は「360度人事評価」という人事評価制度を始める。部下が上司を無記名で評価し、それを本人にフィードバックする仕組みだ。佐山は「会社を強くするためには公平な人事制度が不可欠」という。「経営者こそ厳しく仕事を問われるべき」として、外部から来た経営者としては異例だが、佐山と市江も評価を受ける。
ツートップには、金融出身であることともう1つ、共通項がある。佐山は一緒に暮らす祖父が経営する銭湯のタイルを一人で掃除していた姿を覚えている。市江は満州帰りの父が開業した饅頭店の経営の苦労を見てきた。現場を尊重することについて2人の価値観が通じ合うのは、実業を身近に育ったことも関わりがあるのかもしれない。
スカイマークの目標は「日本一愛される航空会社」だ。それはどういう会社なのか。佐山は「価格が安いだけでなく、価格に関係なくスカイマークに乗ると気持ちがいいという理由で選ばれること」と言った。そのためには第三極であり続けることが必要になる。自ずと、ANAとのシステム統合の実現は困難と予想される。
格納庫の機内で行われた入社式で、佐山は125人の新入社員に向かって、「自分で考えて仕事をする人になってください」と語りかけた。この2年で社員の変化を見てきた実感のこもった言葉だ。
17年度は国際線のチャーター便を計画している。目指す上場予定は2020年9月28日である。
(文中敬称略)
1953年生まれ。76年京都大学工学部卒業。94年ニューヨーク大学大学院(MBA)、99年東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。帝人、三井銀行(現・三井住友銀行)勤務を経て、98年ユニゾン・キャピタルを共同設立。2008年インテグラル社長。15年より現職。
1960年生まれ。82年東京大学法学部卒業、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)に入行。2012年常務、13年取締役。15年より現職。
1967年熊本県生まれ。ノンフィクションライター。「人物と世の中」をテーマに取材。2009~2014年北京在住。ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト「BilionBeats」運営。