観光客が10分の1以下に激減した「忘れられた島」

東京から飛行機で3時間半。美しい珊瑚礁の島・サイパンには、かつて年間45万人の日本人が訪れていた。それが今ではわずか4万人。2018年には日本からの直行便もなくなった。いわば「忘れられた観光地」になってしまったのだ。

そのサイパンに、スカイマークが就航するという。3月と5月にチャーター便を運航し、夏ごろに1日1便の定期運航を始める目標だ。実現すれば、国内航空会社の「第3極」を自認する同社にとって、はじめての国際定期便となる。

スカイマークの佐山展生会長(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「チャンスはあります」

スカイマーク会長の佐山展生は、筆者の取材に対し、そう言い切った。佐山は同社の筆頭株主、投資ファンド・インテグラルの社長でもある。

「われわれが飛ばせる距離には制限があります。かといって、LCC(格安航空会社)や大手二社の混戦しているところに飛び込んでいくのは、われわれの戦術ではない」

他社便がないので、飛ばすだけでシェア100%

スカイマークの所有する機体はすべて同型の中型機であるため、途中で燃料補給をせずに飛ばせる距離に限りがある。

飛行可能域内には台北、香港、ソウルなど、観光、ビジネス両面でニーズの高い都市は多い。どの路線も国内外の大手からLCCまで、1000本単位で飛び、価格競争は熾烈だ。

「需要の高いところには競争が集中します。大手に勝つためには、違う闘い方をするんです」

なるほど、他社便が飛んでいないサイパンならば、渡航者は100パーセント、スカイマークを選ぶことになる。4万人については他社と食い合うことなくすっぽりスカイマークの機体に収めてしまうことができるというわけだ。

ガラパンの街中 アメリカンメモリアルパーク前(写真=マリアナ政府観光局/MVA)

「他社がこのわずかなパイをとりにくるとは、よほどのことがない限り考えられません。サイパンの関係者からお話をいただき、ぜひやろうと」

大きな市場ではなく、むしろ、誰もほしがらない小さな市場を一手に引き受けるほうが、勝ち目はある――。隠し絵のような話だが、視点をちょっとズラすと、ビジネスの可能性が見えてくる。スカイマークには茨城空港という先例もあるからだ。