茨城空港からの国内線はスカイマークの独占市場

茨城空港は2010年に民間空港として開港したが、国内線を運航しているのはスカイマーク1社である。栃木や群馬など周辺県に空港がないなか、茨城空港は北関東の人たちにとって利便性が高い。現在、札幌(2往復)、神戸(2往復)、福岡(1往復)、那覇(1往復)の4都市に就航している。

つまり茨城空港からの国内線については、スカイマークの独占市場ということができる。

スカイマークの佐山展生会長(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「東京にいる人たちは『なぜ茨城空港なんて……』などと言います。でも、北関東の方たちにとっては成田も羽田も遠い。これまで飛行機を利用しにくかった地域です。それが、茨城空港を利用すれば、格段に移動が便利になるのは間違いありません」

スカイマークと茨城空港の縁は深い。2015年12月にスカイマークが経営破綻した際には撤退も懸念されたが、苦しい時期を乗り越えた。

バスケットボールのプロリーグ・Bリーグでは、茨城県のクラブと就航地パートナーシップを締結し、冠試合や協賛試合を開催するなど、地域密着型のプロモーションに力を入れている。

「いちばん苦しい上り坂こそチャンス」

佐山は年3~4回フルマラソンを走るランナーでもある。「ズラし」の経営について、マラソンにたとえてこう話した。

「マラソンの上り坂といっしょです。しんどいところにさしかかると脱落していきます。そこをぐっと我慢して、坂を上り切ったら、勝てるんです」

ほかの投資先でも、「ズラし」の成功体験がある。たとえば、封筒に大量に書類を入れる封入封緘(かん)機の製造メーカー、BPS。

BPSの封入封緘機「EXTRUST」。最大10000通/時(名寄せ枚数1枚)の処理速度を持つ。(写真=BPSウェブサイトより)

佐山の経営する投資ファンド・インテグラルは、2009年からBPSの再生支援を手がけている。当時、BPSの業界シェアは5割程度だったが、ダイレクトメールなどの減少により、同業他社が相次いで撤退。現在のシェアは3分の2ほどに高まっている。

「市場規模を参入企業数で割るとどうなるか。封入封緘機の市場がなくなるわけではない。撤退する企業が増えるほど、シェアは伸びる」(佐山)

その視点からサイパン路線就航を見ると、独自の位置づけが見えてくる。