16年10月、市江を座長に全社の部署横断による「定時性向上対策本部」が発足した。目標は日本一。それは定時出発率で95%を上回ることを意味する。国交省航空局は国内運航航空会社11社の定時運航率を3カ月ごとに発表している。このなかでスカイマークは概ね3位につけているが、まだ1位を取ったことはない。日本一のためには、各部署の業務改善が必要になる。
「目標が示されたことで現場の意識が変わった」。そう話すのは、昨年12月まで沖縄支店で43人のスタッフをとりまとめていたランプ部門の田中だ。
「ランプ部門では次々に着陸する機体から荷物をスムーズに運び出すために、人員配置を工夫しました。1機あたり2人で担当していたのを、別にもう1人立てました。その1人が状況を見ながら複数の機体に目配りをして、遅れがちなところをフォローする体制に替えました。これは現場から上がったアイデアで実現できたことです」
目標に向けて自分にできることをとみんなが考えるようになった。そう田中は言った。
「それは、スカイマークというひとつの会社だからなんです。今月の売り上げがよかったと経理の人に聞けばうれしい。だから売り上げや定時性に少しでも貢献しようと思える。これが子会社だったら、親会社の売り上げが高くても低くても我々には関係ないと思ってしまう、それは正直、ありますよね」
「上から指示」から「下から意見」に変化
客室部門にも変化が起きた。
きっかけは、16年秋から食品メーカー・ネスレと提携して機内サービスを始めたことだ。「サービスはしない」ことにまでなっていたスカイマークでは、コーヒーサービスを始めるにしてもマニュアルと訓練が必要となる。客室訓練課教官の佐々木美枝(37)は、ゼロから教育マニュアルを作成した。
佐々木の上司であり、ANAから出向中の客室訓練課長・青木智恵子は、マニュアルの作成は「独自のサービスを見出すプロセス」だと捉えている。
「丁寧すぎない自然なサービスを模索していけるのはスカイマークならでは。スカイマークらしさを伸び伸びと探していくのが大事だと思います」
佐々木は、最近、指導した若手が見事にサービスをしているのを確認して嬉しかったと、こう力を込めた。
「基本はマニュアルと訓練で押さえつつも、各客室乗務員がお客様に合わせて臨機応変に対応することがスカイマークらしいんだと思います」
16年11月には、オレンジ色のポロシャツから紺のジャケットに制服が変わった。主導したのは、約20人の制服検討委員会。メンバーで客室乗務員の橘真生(33)は、新制服ができるプロセスと組織の変化を重ねてこう話した。
「上から指示がおりてくる組織から、今は下から意見を上げていく会社に変わりました。新しい制服では、私たち客室乗務員が誠実さを表現しました」