スタバ、ヨーカ堂、ANA……「接客好感度」ランキングの上位企業が評価される理由とは。各企業の人材教育とマニュアルから紐解く。

マニュアルではなくヒントを与える

「スタバの店員さんが僕のことを好きみたいなんです」

証券会社に勤める知人が嬉しそうに告白したとき、筆者は「オレも同じ経験がある」と言いそうになった。

マニュアルどおりとは思えない親しげな笑顔で話しかけてくれるスターバックスコーヒー(以下スタバ)の店員たち。知人によれば、「毎朝通っていたら好みのラテを覚えてくれた。しばらく立ち話をすることもある」という。勘違いするのも無理はない。

個人商店と常連客ならば当たり前のやりとりかもしれないが、スタバは世界的なチェーン企業である。どうしてこのような接客が可能なのか。

「接客マニュアルはありません。この話法を使い、この角度でおじぎしなさい、という規定はないのです」と語るのは、『スターバックスの教え』著者の目黒勝道氏。スターバックスコーヒージャパンで12年間勤務し、教育・人事の管理職を務めた経験がある。目黒氏は、スタバではマニュアル教育の代わりに「自分たちの存在意義」の浸透・共有を常に図っていると明かす。スタバ店員の存在意義とは、「感動経験を提供し人々の日常に潤いを与える」ことだ。

「スタッフに応募する人は、すでに客として『スタバは雰囲気がいいな』と思っている人が多いのですが、採用面接の際に会社方針に共感できるかを改めて確認します。採用後は80時間の研修(有給)を受けます」

店舗配属後も、「存在意義」の認識を深める仕組みがある。よい行動も悪い行動も上司からフィードバックを受け続けるのだ。

「接客が失敗したときよりもうまくいったときのフィードバックが重要です。なぜその行動をとったのかを聞き、『次からはもっとやってね』と奨励します。それによって自信がつき、パートナーのサービスが向上していくのです」


スターバックス店員のバイブル「グリーンエプロンブック」

目黒氏によれば、スタバでは入社時に「グリーンエプロンブック」(写真参照)と呼ばれる小冊子が配られる。マニュアルではないが、スタバが掲げる「ミッション」や「行動指針」が美しい絵とともにシンプルに描かれている。

「命令ではなく、ヒントなのです。接客で迷ったときなどはこれを開いて自分に期待されていることを確かめます。パートナー同士の意見交換のときにもよく使いますよ」