低価格戦略から一転、新デザイン店舗やプレミアム商品の投入で話題をつくりながら業績を挙げてきたマクドナルド。好調を支える、アルバイト戦力化の仕組みとは。
全国17万人のバイトが共有する研修カリキュラム
せっかく採用した新人が思うように働いてくれない。強く言うとむくれて出社しなくなりそうだし、下手すると辞めてしまう。最近、企業の人事担当ばかりでなく、部下を持つ30代、40代の管理職の人たちからもこういう悩みをよく聞く。そういう場合、私はこう答えることにしている。飲食業、たとえばマクドナルドのアルバイト育成法に学んだらどうでしょう、と。
従来、飲食業のアルバイトは定型労働と考えられていた。服装や身だしなみ、口の利き方に少し配慮しさえすれば、誰でもできる簡単な仕事というイメージだ。したがって、アルバイトに対して教育訓練を実施している企業は少なく、簡単なOJT(On the job training)で済ますところが大半ではなかったか。
そこに待ったをかけたのが、1971年5月、日本に初上陸したマクドナルドだ。同社は痒いところにまで手が届くマニュアルを整備し、アルバイトではなくクルー(乗組員)という名称を使った。さらに、教育係としてのクルートレーナー、正社員とクルーの橋渡し役であり店舗管理の一部を担うスウィングマネージャーと、アルバイトにも職階を設けた。
もちろんアメリカ流のプログラムや制度が基盤にあることは確かだが、以来40年、そこに日本流のアレンジを加え、若者の知恵とやる気を引き出す環境をつくり出してきた。同社が過去採用してきたクルーの数は国内で累計260万人を超えるといわれている。