「同じ商品を売るにも消費者ごとに、多様な価格で売る。いわゆる価格差別が常識の時代になりました」
と吉本さんはいう。
モノが売れないと嘆く企業が多いが、一方では、確実に利益を伸ばしている企業が何社もある。本書は、「価格差別」をキーワードに、そんなデフレ時代の勝ち組企業の巧みな「価格戦略」を取り上げている。
例えば、第一章の「おまけ商法」。いまではアイドルグループの名前を冠した「AKB商法」ともいう。例えば、昨年12月に発売されたAKB48のゲームソフトの初回限定版には、メンバーの写真10枚が入っていた。写真は3種類あり、それぞれでメンバー全員を揃えるには最低でも15セット必要になる。ゲームソフトは1セット1万479円なので、約16万円だ。そんな売り方に批判もある。
「AKB商法は、価格差別として非常によく練られています。
他の章では、高機能なのに価格はどんどん安くなるゲーム機やテレビ、牛丼チェーンの値下げ競争や百円ショップ、ユニクロの商品と価格戦略などを取り上げています」
そして、マクドナルドの携帯クーポンやTSUTAYAのTカードなど、ITをフル活用した顧客情報に基づいた、より高度な価格差別の手法を解説した章もあり、読み応えがある。
企業で価格戦略やマーケティング戦略を考える担当者にとっては、価値ある一冊だろう。中高生、大学生なども読者として意識しているため、若者向きの実例も多く、非常に読みやすく、理解しやすい。
本書は電子書籍にもなった。
「電子版には、紙版ではページ数の関係で削った二章分を追加し、図版を動画化してコラムも加えました。また、本書を書くにあたって大変参考になった『美学vs実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史』(西田宗千佳著)の第三章が読めるようになっています」
単に紙書籍の電子版ではない“意欲版”の価格は1700円(税込み)だ。