かくいう私はマクドナルドによく行く。駅などに近くて便利という理由だけではなく、常に商品がスピーディに提供され、カウンターのスタッフが微笑んでくれるのが心地よいからだ。いくつものハンバーガー・チェーンがあるが、この「スピード」と「スマイル」という点では他社を圧倒的に引き離している。接客以外の、商品の味や店舗の清潔感も同様である。

驚くべきは、全国どこのお店でも同じクオリティでそれを実感できることだ。マクドナルドの店舗は国内に約3300(2010年度末時点)あり、そこで働くクルーの数は17万人に上る。これだけの規模を誇りながら、全国の店舗で均一なサービスを保つのは簡単なことではない。

直感したのは、マクドナルドにはクルーの担い手となる若者たちを、組織的かつ短期間に育てる仕組みが備わっているに違いない、ということだ。そこで人材育成担当者はもちろん、実際のクルーに何人も会って話を聞かせてもらった。私の読みは当たっており、マクドナルドには若手のクルーを素早く成長させる仕組みが確かにあったのである。

同社はなぜそういう仕組みを確立させているのだろうか。推測できる理由は一つある。これだけの店舗、スタッフがいる中では、せっかく採用し育て上げたクルーがすぐに辞めてしまえば莫大な損失を被ることになる。新たな募集をかけるための広告費ひとつ取っても大変な金額だ。そこで同社のビジョンや仕事内容にマッチした人の採用に力を入れる一方、いったん採用した人が短期間で辞めてしまうのを防ぐ仕組みをつくってきたということではないだろうか。

ファストフードのアルバイトの話が役に立つのか、とばかにしないでほしい。同社のクルー育成法には、ホワイトカラーの新人育成にも役立つことがたくさん詰まっている。以下、そのエッセンスを紹介しよう。