「腑に落ちない」とやらされ感が募る

――高い専門性と目標を達成する能力を持ち、それでいて組織のカベを越えていける人材を育てる工夫は?

私はよく営業や物流、製造などいろんな部門の人間をごちゃ混ぜにして5~6人のチームをつくり、組織の課題や我々が目指すべき「キリンウェイ」という行動規範についてディスカッションさせています。そうすると全く異なる他部門が苦労しているポイントの理解や、「向いている方向は一緒なんだ」と思いの共有ができるのです。

前提には自由闊達な雰囲気が必要です。その中でお互い意見を言い合い、楽しく生き生きと仕事ができて、自分が成長している実感を持てる組織をチームごとにつくっていかないといけない。現場で気付いたことを提案して実現する現場力は、自由闊達な雰囲気の中でプロ意識を持った人間が互いにおせっかいをしながらワイワイやらないと出てこないんです。こういう時代ほど、そんな人たちがズラリと揃うと強いというのが実感ですね。

――逆に、不要な社員はどんな人ですか。

求められる社員をつくるのはリーダーの役目ですから、「こういう社員はいらない」というのは天に唾するようなもの。不要な社員を語る前に、社員を育成するリーダーの工夫が求められます。

――では、不要なリーダーはどんな人でしょうか。

経営方針や経営計画が出たときに「会社が決めたからおまえらやれ!」という人や、経営方針を自分の職場に落とし込んでその意味やメリットを自分の言葉で説明できない人です。これが結構多い。リーダーは「腑に落とす」努力を怠ってはいけないと思うんですね。みんな腑に落ちなくてもある程度は業務をこなしますけど、そういう仕事はやらされ感が強く、うまくいかないと「やらせるほうがいけないんだ」となってしまう。

だから私は「なぜこれをやるんですかと何度でも上司に聞いてみろ」と言っているんです。2、3回聞かれただけで「会社が決めたんだから黙ってやれ!」というリーダーはいりません。実際、こういうリーダーの下で求める人材は育っていませんし、何よりリーダーを選べないことが部下の不幸ですからね(笑)。

(宮内 健=構成 尾崎三朗=撮影)