キャメロンは21世紀のチェンバレン?
一方のキャメロン首相は自分をチャーチルと同一視しているわけではなさそうだ。しかし、チャーチルの戦時の決断力に相当の感銘を受け、日々の糧にしてやってきた。
6月20日、BBCの「クエスチョンタイム」と言う番組に出たキャメロン首相は、視聴者から「あなたは21世紀のネビル・チェンバレンではないか」と言われた。チェンバレンは第2次大戦勃発直前の首相で、ナチスに対し宥和策を取った不名誉な評判を持つ。このチェンバレンに代って、チャーチルが戦時の英国を率いた。
この質問に衝撃を受けたかのようなキャメロンはチャーチルを持ち出してこう答えた。
「私のオフィスからすぐの場所にチャーチルが1940年5月、たとえイギリス一国でもナチスに戦うことを決定した部屋がある。チャーチルは孤立したくはなかった。フランス人やポーランド人とともに戦いたがっていた」
「チャーチルは臆病者ではなかった。民主主義のために、自由のために戦い続けた。今、同じことのために戦いたい。この部屋の中に私がいなければ、戦うことはできない」
翌日、官邸前で国民に向けて最後のアピールをしたキャメロンは、チャーチルをほうふつとさせる言い方をしている。EUに加盟し続けることによって「民主主義、自由、寛容――イギリスはこうした価値観を守ることができる……われわれが世界から離れていくようではいけない。世界と関係を持つことによって価値観を守ることができた。イギリス人は臆病者ではない」。
キャメロンとジョンソン。現首相と次の首相の有力候補の間で、チャーチルは非常に重要な意味を持っているようだ。