ミスをした日は、ヤケ酒よりも早めの就寝
さらに言えば、不快な記憶をリセットできるのも、やはり睡眠の効果だ。
「ネガティブな感情は、レム睡眠中に脳内で処理されることが研究で明らかになっています。理不尽なことで上司に怒られたり、凡ミスをおかしてしまったりしたときには、お酒を飲むよりも寝るに限る。翌朝には気分が晴れて、『よし、頑張ろう』という前向きな気持ちになれます」
反対に、睡眠不足の状態では、嫌な記憶が残ったまま。そればかりか、ちょっとしたことにイライラして、攻撃的になりやすいと西多さんは指摘する。
「MRIを用いた実験結果で、睡眠不足の状態では怒りや恐怖の発生源である脳の扁桃体が活性化することがわかっています。すると、ストレスホルモンのノルアドレナリンが働きすぎて恐怖を感じたり、凶暴化したりする。一方で、先にも述べたように、寝不足になると前頭葉の働きは低下します。前頭葉の前頭前野は自制力を生み出す部分。つまり、ノルアドレナリンの暴走が止められなくなってしまうのです」
なぜ、扁桃体が活性化するのかは解明されていないが、
「睡眠は生命を維持するために不可欠な生理現象。それが十分に取れないと脳は危機を感じ、生き残りをかけて凶暴化するのかもしれません」
と西多さんは推測する。
いずれにしろ、ささいなことでイライラしていては仕事が手につかず、パフォーマンスが落ちるのは自明の理だ。何気ない相手の言葉に激怒するなど、職場の人間関係まで悪くしかねない。「あんなことで怒るなんて」と周りの目も冷ややかになり、自分の評価を落とすことにもなるだろう。