本当に「地味」な会社なのか
実は今、三菱電機の強さが注目されている。2015年3月期に7年ぶりに最高益を達成してからは、株式市場でも改めて注目され始めた。2016年3月期は売上高が過去最高となる見通しだ。
実際、三菱電機は重電3社の中で7.3%と最も高い営業利益率(2015年3月期)を誇る高収益経営を実現。また「特許資産規模ランキング」(2014年度)でも、トヨタ自動車やパナソニックを押さえてトップだ。創業100周年を迎える2020年には売上高5兆円、営業利益率8%とする目標を掲げている。また、世間のイメージとは裏腹に全上場企業で1億円以上の報酬を受け取った役員数(同)でも、三菱電機が23人とトップに立つ。社長の年収は2億6000万円にものぼる。
以前の三菱電機は、国内重電の中では日立、東芝に次ぐ3番手として「地味」「堅実」と言われてきた。それは、三菱グループという大看板に隠れていたせいかもしれない。あるいはインフラなど法人向けビジネスが多かったからかもしれない。しかし、一つの電機メーカーとしての実力で見れば、むしろ「したたかでアグレッシブ」だと言っていい。
現在、三菱電機が好調な理由は、経営資源を産業メカトロ、重電、家電の3部門に集中させたうえで、いわゆるBtoBにビジネスを集中させているからだ。重電部門では電力、交通、ビル、産業メカトロ部門ではFA(ファクトリーオートメーション)と自動車機器、家電部門では業務用空調機器、住宅機器などがけん引役となっている。
加えて、大手電機メーカーの中でも、三菱電機は「事業の選択と集中」をいち早く、より確実に実行してきたと言われる。
1990年代後半、ほかの大手電機メーカーと同様、三菱電機も半導体事業で大打撃を受けた。それをきっかけに、収益の変動幅が大きい事業や製品を切り離す事業リストラを開始した。1999年にはパソコン事業から撤退。
2003年には半導体のDRAMとシステムLSIの2事業をそれぞれ、エルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)とルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)へ切り離している。2008年には、携帯電話端末事業と洗濯機事業からも撤退した。
その結果、事業ポートフォリオを「強いものをより強くする」方向へ組み替え、安定的な収益が見込めるBtoB分野に経営資源を集中する構造改革に成功したのである。