事業間連携がうまくいくわけ
実は柵山社長の言う、この「連携」こそ、三菱電機の実力の謎を解く一つのキーワードだ。
実際、その動きを明確化させるために、2003年から事業間連携を生み出す専門部署として「戦略事業開発室」を立ち上げている。社内では「リエゾン」(橋渡し・連携)と言われているものだが、スタッフは基本的に各事業本部の中でも有望な人が任命される。そうした人材を一定期間でローテーションさせて、次世代の優秀な者にバトンタッチするかたちで運営されている。
戦略事業開発室長である中竹春美氏は、こう語る。
「2000年のITバブルが弾けたときに、強い事業を強くすると同時に横串を通すことで、新たなソリューションを生み出すことが命題となりました。そうしなければ、継続的な成長は望めないと経営層が判断したのです」
それまでは連携といっても基本的には技術シナジーにとどまっていた。だが、事業間のシナジーでなければ、新たな事業の種が出てこない。そんな危機感のもと、この部署が営業本部の中に設置されたのである。そして13年目。今やこの「連携」はお題目ではなく、社内各部門に広がっている。
「我々のビジネスは単に空調を売るだけでなく、ビル向け商談ならエレベーター、照明、セキュリティなどすべての管理を含めた統合管理システムとして売り込むようにしています」
空調事業を統括する専務執行役リビング・デジタルメディア事業本部長の杉山武史氏は、そう語る。同社の製品群はBtoB中心であるため、事業間の親和性が高い。しかも製品同士がつながりやすいから、ユーザーにも説明しやすいのである。
ユーザーにとっては、ワンストップで発注したほうが故障やリニューアルの相談がしやすいというメリットが生まれる。こうした事業間をまたいだ営業を社内では「連携営業」と呼び、各部門とともに積極的に推し進めている。