【弘兼】顧客の幅を広げるという観点でいえば、海外での展開にも注目が集まっています。バンダイナムコでは3年後までにアジアでの売上高を現在の倍となる600億円にまで引き上げるという目標を掲げています。
【石川】少子化の進む日本でビジネスを拡大させるには、やはり限界はあります。アジアには期待しています。
【弘兼】アジアでビジネスをする場合、「偽物対策」が重要だと思います。先日も私がインドに取材旅行に行ったとき、キティちゃんのグッズを持った人が沢山いましたが、残念ながらみんな偽物でした。
【石川】偽物を取り扱っている業者に法的措置をとるというのは当然です。しかし、キリがない。法的措置とは別に、我々は本物のよさをしっかり伝えていくことが最良の対策になるのではないかと考えています。
【弘兼】本物のよさとは?
【石川】たとえばガンプラの組み立てには今は接着剤が要りませんし、各パーツ自体に色がついた状態で成形されます。偽物は沢山ありますが、そこまでは真似できない。店頭ではあえて本物と偽物を並べてもらう。値段は5倍ぐらい違いますが、わかる人は本物を買います。
【弘兼】さきほどこちらの売店を見て回ったのですが、中国からのお客様は多いですね。それも1万~2万円もする高額な商品を買っていました。
【石川】現在、この施設では約3割が外国人観光客による購入です。「偽物対策」は映像についても同じです。日本でアニメを放送すると、すぐに現地語の字幕付きでコピーが出回ってしまう。そのためガンダムについては11年から多言語の字幕付きで、正規版を無料で世界同時配信しています。最新作の配信先は、240以上の国・地域に広がっているところです。
【弘兼】一番視聴者の数が多い国はどこでしょうか。
【石川】やはり中国です。ガンダムなどは世界中で愛されているキャラクターですが、中国をはじめ台湾や韓国などのアジアの国々は日本人と嗜好性が似ているようです。妖怪ウォッチも今、アジアでブレークしています。仮面ライダーやスーパーシリーズは韓国で人気がある。コンテンツごとにきめ細かい対応は必要になりますが、アジアでの展開にあらためて手応えを感じているところです。
【弘兼】インドにも店舗を進出させたとうかがいました。海外展開が進むなかで、ここはまさに「聖地」になるのでしょうね。屋外にある高さ18メートルの「実物大ガンダム」立像の周りにも、大勢の外国人観光客が集まっていました。
【石川】統合から10年を迎えて、ようやくお互いの強みを活かせる態勢が整ってきました。今後はさらに面白いことを仕掛けていくつもりです。ぜひご期待ください。