弘兼憲史の着眼点
▼アジアの偽物対策には本物を見せて対応する
バンダイナムコHDではこの10月にインドのムンバイでアミューズメント施設をオープンしました。これまで東南アジアでも同様の施設を運営していましたが、インドでは初めてのことです。
石川さんの後を継いで社長となった田口三昭社長は「他社と連携してオールジャパンで取り組みたい」と話しています。コンテンツ産業は日本の主力産業の1つとなるべきですし、そうなっていくでしょう。
とはいえ、特にアジアでは偽物対策は頭が痛いものです。私の場合も韓国、台湾、そして東南アジアの国々からは印税が入ってくるのですが、中国だけは入ってこない。私だけでなく、中国からの印税が入ってくれば、日本の漫画界は潤うでしょう。
その意味で、法的措置と同時に「本物」を見せるという発想にはなるほどと思わされました。
私がガンダムフロント東京のショップを回ると大きく「日本製造」と書かれていた。日本製が、信用になっていると強く感じたものです。高値で転売できるからか、高額であっても限定商品が人気あるそうです。
▼目先の利益にこだわるな、認知度の浸透が第一
ガンダムフロント東京のアトラクションの1つに、ガンプラのパーツのデモ製造というのがありました。そこでできたばかり、生温かいパーツを触らせてもらいました。その精度はさすが、というものでした。接着剤を使わずに組み立てられるという技術は日本ならではでしょう。
映像についても無料配信、別のところで稼ぐというのも新鮮でした。デジタルの時代になりコピーが容易になりました。無料配信、収益を期待できない分野と、しっかりと稼ぐ分野の見極めが大切なのかもしれません。その意味で、IP軸で従来のグループ内の事業会社の収益に一喜一憂せず、IP軸で事業をとらえるという石川さんの方針は理にかなっているといえます。
ガンダムプラモデル(オルフェンズ)(C)創通・サンライズ・MBS
たまごっち(C)BANDAI,WiZ
ワニワニ、パックマン、アイドルマスター、太鼓(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。