「たまごっち」担当役員が「CTO」と呼ばれる理由

【弘兼】現在は絶好調ですが、10年前にバンダイとナムコが合併してしばらくは経営難だったそうですね。

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合併直後は低迷も6年目からV字回復

【石川】ええ、厳しい時期がありました。統合して4~5年目あたりまでは業績が落ちていき、2009年には営業利益がゼロに近くなった。

【弘兼】石川さんは、そのどん底の年に社長となった。どのように立て直そうとしたのですか。

【石川】バンダイナムコという会社は、いろいろと個性のある小さい集団の集合体なんです。1つの顔ではなくて、バンダイやナムコのなかに様々な顔があり、この個性ある集団がエンターテインメントのビジネスをやっている。そう考えるところから始めました。この時期から私は「IP軸戦略」と言い始めました。

【弘兼】IPとはインテレクチュアル・プロパティ(知的財産)ですね。

【石川】はい。ガンダムならばガンダムというキャラクター、IPを中心に考えて事業を進めようと切り替えたんです。ガンダムを好きな人はガンダムのゲームもガンプラも映像も好き。キャラクターを様々な出口で、旬なタイミングで展開していく。

【弘兼】つまり以前の事業軸であれば、ゲームセンター部門、プラモデル部門、おもちゃ部門というふうに分かれていたのを、いわば横軸でキャラクターを中心に考えるように変えた。

【石川】そうです。たとえば当社には「CGO」という役職があります。

【弘兼】CEOではないのですか?

【石川】バンダイナムコグループだけにある肩書で「チーフ・ガンダム・オフィサー」という役職なんです。そのほかにも「CTO(チーフ・たまごっち・オフィサー)」「CPO(チーフ・パックマン・オフィサー)」という具合に、主要IPにはそれぞれ役員を付け、彼らがそのキャラクターの展開を最終的にジャッジするという仕組みです。

【弘兼】会社的な役職とは別にIP軸で社内縦断的に動くことができるということですね。

【石川】そういうことです。今年ガンダムで760億円を売り上げたから、来年は800億円を目指そう――。そんなふうにIP単位で全体最適を考えるようにしています。