【弘兼】さきほどメンズ館を見学して、「高級志向」ではあるけれども、手頃な商品もあると感じました。シャツであれば、数万円の高級品もあれば、6900円の手頃な商品もある。価格帯は幅広いのですね。
【大西】「プライスライン」と呼ぶ1つの基準があります。百貨店は専門店とは違って、マスの市場で商売をしています。だから多くのお客様が「シャツならこれぐらいの価格かな」と考える基準を守る必要があります
【弘兼】高級品だけを取り扱うのでは、百貨店としてはダメなんですね。
【大西】「入りづらい」というご意見をいただくこともあるのですが、どれだけ高級なイメージがあっても、店頭には手頃な商品がなければいけません。バイヤーには少なくとも5割以上はプライスラインを守った商品を置くように指示しています。プライスラインより高い商品は最大2割。残りの3割はバイヤーの権限に任せています。百貨店にとってプライスラインは、常務・専務クラスが決裁する最重要事項なんです。
【弘兼】一方で、デフレの際には、ワゴンセールやバーゲンを乱発して、プライスラインが下がりきってしまった百貨店もありましたね。
【大西】一度プライスラインを下げてしまうと、店の格が落ちてしまうので、再び上げるのは難しい。デフレ局面でも「プライスラインは動かすな」と厳命していました。
【弘兼】そうなると現場感覚が重要になりますね。大西さんは売り場に立っていても違和感がない。根っからの販売員という印象を受けます。
【大西】いまもできるだけ店頭に立つようにしています。特に、当社は水曜日が「週のはじまり」なので、開店時にはご挨拶のために店頭に立ちます。店頭の意見は、とても参考になりますね。