高級バスツアーが人気、お客様の人生を豊かに
【弘兼】三越伊勢丹が発足してから7年が経ちました(取材当時)。三越と伊勢丹では、イメージがずいぶん違うので、当時はとても驚きました。顧客層もかなり異なるのではないですか。
【大西】そうですね。伊勢丹は30~50代、三越は60代以上のお客様が多いですし、確かに社風も違いました。正直なところ、当初はなかなか難しい点もありましたが、積極的に店舗間の人事異動を始めてからは、垣根もなくなったと思います。
【弘兼】それでも高齢者には三越が人気なんですね。わかる気はします。うちのお袋もそうでしたから。
【大西】三越のお客様はロイヤルティが非常に高い。この強みを伸ばしていきたいと考えています。
【弘兼】日本は超高齢社会に入っていますから、商機はたくさんありそうですね。すでに三越が手がける高級バスツアーが大変な人気だと聞きました。高齢者にウケているんですね。
【大西】はい。三越では従来からお得意様向けに自社企画旅行を手がけていました。なかでもバスツアーが人気のため、2015年、新しく「三越伊勢丹旅行」という会社を設立して、旅行事業を拡大させます。
【弘兼】パンフレットには「2泊3日23万円、上高地帝国ホテルツアー」とあります。安くはありません。
【大西】通常45席のバスを10席に改造したプレミアムクルーザーと呼ぶ豪華バスで、添乗員と一緒に観光地を巡ります。発売日には定員の9割ほどが売れてしまうなど、大変な人気です。現在このバスは2台ありますが、増車を計画しています。
【弘兼】この連載では、以前、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」を取り上げましたが、そちらもリタイア世代から大人気だと聞きました。
【大西】似ていると思います。これからの百貨店は、単にモノを売るだけではなく、お客様のライフスタイルにいかに関わるかが重要になります。今年は診療所や薬局などをトータル展開する「医療モール」の運営会社も立ち上げました。そのほか、保険や金融なども要望も多い分野です。
【弘兼】店で待っているだけではなく、こちらから出て行くわけですか。
【大西】これまで金融関連のサービスは、窓口を設けるだけで、自分たちでリスクをとるビジネスはしていませんでした。しかし「百貨店だから選ばれる」という時代ではありません。我々にしかできないサービスを突き詰める必要があります。中途半端なものではなく、お客様をわくわくさせられるようなサービスをいかに提供するか。百貨店への期待に応えていきたいと思います。