営業とは、人と話すこと。だからこそ、ごく小さな会話力の差が成績を分ける。各営業のトップセールスにそのコツを聞いた。
高島屋 大阪店 販売2部次長 コンシェルジュ 池末明子氏●1987年入社、プレタポルテの婦人服を担当。2002年、現在のコンシェルジュの前身である「ローズアテンダント」設置とともに配属。

今では広く知られるようになったコンシェルジュとは、個々の顧客の注文に沿った商品やサービスを提供する、いわば“御用聞き”だ。老舗百貨店・高島屋の大阪本店では、2002年から始まった(名称は当初と異なる)この個人サービス専門の職に女性6名が就く。電話やネットで日時を決めて来店した顧客を相手に、ファッション・雑貨のコーディネートを提案するのが彼女たちの主業務だ。

担当は外商部の得意先も含めた同社の上位顧客。富裕層が9割を占め、社長夫人などの女性客やその家族が中心となる。

「百貨店ならではのおもてなしをしつつ、ストレスなくお買い物をしていただくのが仕事です」――同店コンシェルジュの一人、池末(いけまつ)明子氏は言う。

「大事なのは、十人十色のお客様をよく知ること。お客様が気づいていない部分を、プロの眼で見て埋めていきます」

増床で格段に広くなった大阪店は、婦人服だけで3フロア。顧客が一人で歩いてファッション・雑貨をコーディネートするには限界がある。高齢者や車いすの顧客はなおさらだ。そこで顧客を知り、顔色や体形・色彩等によるコーディネートの専門知識を持ち、フロア全域を把握するコンシェルジュがお相手するわけだ。池末氏は顧客1組に3時間、長いときは4~5時間かける接客を月に約50件こなす。無論、その間の顧客との会話は不可欠である。

「最初はお客様も緊張されて、眼を見ると瞳孔が引き締まっているなと感じることも。そんなときにこちらが強烈な笑顔をつくっても逆効果。リラックスしていただくためにも、ゆっくりと、『何を仰っても受け止めますよ』『どうぞ、安心してお話しください』というソフトな雰囲気を声や体で醸しながら、信頼感を少しずつ蓄積していく、という感じです」