営業とは、人と話すこと。だからこそ、ごく小さな会話力の差が成績を分ける。各営業のトップセールスにそのコツを聞いた。
JTBコーポレートセールス ビジネスソリューションチーム グループリーダー 広瀬啓太氏●1984年12月、東京都生まれ。立正大学文学部を卒業後、2008年入社。JTB神保町支店を経て現職。実家は江東区で焼き鳥屋「かめ六」を営む。

旅行業最大手のJTBグループで研修や団体旅行など法人向けサービスを提供するのがJTBコーポレートセールス。優秀な営業マンがそろうなかでも、顧客からの信頼が厚く数々の社内アワードを受賞しているのが、霞が関第二事業部で研修ビジネスを担当する広瀬啓太氏だ。

入社後すぐに配属されたJTB神保町支店時代からの上司で、営業推進本部グループリーダーの石川知弥氏によると、広瀬氏は「新入社員の頃から落ち着きがあり、話術に長けていた」。法人営業担当として、毎日50~60件の飛び込み営業を行っていた新人時代、広瀬氏はお客さんに好かれ、頼りにされて、大口の仕事をどんどんとってきたという。その理由を広瀬氏自身はこう分析する。

「大学2年のときに、父が脱サラして焼き鳥屋を立ち上げ、しばらく私も店に出ていました。このときの経験が私の商売の根底にあります。父のカウンター越しのお客さんとの会話を通して、お客さんとの接し方、交わす言葉の選び方からお客さんの心のつかみ方まで、いまの仕事に必要なものを体得していたのだと思います」

もともと社交的な性格で、人と話すのが好きだったという広瀬氏だが、セールススキルを社会に出る前にすでに備えていたという自覚は、セールスの仕事に就くうえで大きなアドバンテージとなったといえよう。

現在の担当分野は企業研修で、企業の人事、採用、教育の部署に新規飛び込み営業を行うのが中心業務である。ただでさえ難しいとされる飛び込み営業だが、広瀬氏が相手にするのは「人を見るプロ」。考えていることを容易には顔に出さない。

だからこそ、ちょっとしたサインを見逃さず、細心の注意を払って言葉を選ぶ。セールスの際に自分に許された持ち時間もサインで読み取る。

「眉をこすったら『2分くらいが限界かな』とか、身を前に乗り出してくれたら 『あと10分くらいはいけるかな』と」