初回の面談では需要自体があるかどうかを引き出したら、長居せず、最低限の情報を持ち帰って具体的な提案は2回目以降の訪問で行う。決して「押しつけない」のが広瀬氏の鉄則。「お客様にとって価値あるものを提供できるという自信があるので、押し売りはしませんし、過剰な説明もしません」。
では、どうやって顧客を得ているのか。前出の石川氏はいう。
「彼の強みは『コミュニケーション』と『コミットメント』。自分のプライベートな話もどんどんして、お客様の心を開くのが実に上手い。そして、無理をしてでもお客様との約束を守る、という姿勢を貫いています」
顧客、とくに社長からトップダウンでくる要求の中には、「さすがにそれは無理だろう」と思われる突拍子のないものも少なくない。ほかの営業パーソンが「それはできません」とその場で断るものを、広瀬氏は持ち帰り、どうすれば実現できるかと考える。
「固定観念にとらわれず、頭をまっさらにして、できない理由をひとつずつ挙げ、それをひとつずつ解決していく。すると一見不可能と思えることでも、できることがあるのです」
広瀬氏の仕事はリピート率が高いと評判だが、それはこうした水面下の努力にも支えられているのである。
(永井 浩=撮影)