実践4:褒められ世代は道半ばであると、わかるように褒めよ!

現在の若者は子供のときから「褒めて伸ばす」教育を受けてきている。いわば、ご褒美が与えられるのが当たり前となっている世代だ。困るのは、叱られることに対する免疫ができていないこと。上司に叱られ、落ち込むと、そこからポジティブな方向へと向かわせるのが容易でないケースもある。

「かつては、職場にいわゆる兄貴分・姉御肌の先輩がいて、縦でも横でもない斜めの人間関係がありました。これがメンターとして機能し、若手の救いとなっていた側面があります。職場環境にそれが望めないなら、褒められ世代に対しては、ふだんから軽めに叱って免疫をつけていくことが重要です。

また、褒めるときは、いま、どの位置にいるのかがわかるように知らせることが肝心。私の教え子は会社の上司から『君は同期の中では一番素晴らしい。だけど、会社全体で見ればたいしたことはない。次は会社全体の中でもっと上位にいけるよう頑張れ』と褒められ、励まされたそうです。教え子は、俄然やる気がわいたと言っていました」(太田氏)

成瀬氏は、プロセスを褒めることが大切だと強調する。

「褒めるときは、結果だけでなく日々の努力も褒めれば、上司からの『おまえの苦労はいつも見ているよ』というメッセージになり、部下も『報われた』という印象が強くなります。上司が部下を叱責ばかりしていると、だんだんそれがBGMのように聞き流されるだけになってしまいます。本気のダメだしは、“ここぞ”というときのためにとっておくことが大切です。一方、『おまえはやればできる』という声かけはNGです。そう言われた部下は『そんなふうに評価してくれているなら、わざわざ失敗のリスクを負ってまでチャレンジする必要はないな』と、逃げの態勢に入るからです」(成瀬氏)

太田肇
神戸大学大学院経営学研究科修了。京都大学経済学博士。現在、同志社大学政策学部教授。個人を尊重する組織論者として知られる。『承認とモチベーション』(同文舘出版)、『表彰制度』(東洋経済新報社)など著書多数。
 
成瀬まゆみ
ポジティブ心理学を応用して日々の幸福感を上げ、より豊かな人生を送ることをテーマに、セミナー、個人セッションを行っている。『ハーバードの人生を変える授業』(大和書房)、『ザ・ミッション』(ダイヤモンド社)などを翻訳。iPhoneアプリ「ハッピーパワー」の開発者。
(熊谷武二、遠藤素子=撮影)
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