京セラ創業者にして、JAL名誉会長の稲盛和夫氏。リーダー教育をいかになすか。そもそも教育は可能なのか。名実ともに日本一の経営者である実業思想家は、「高収益体質の極意」を明鏡止水の如く語りはじめた──。
「強い意志」に裏付けられた使命感
次のリーダーをどう育成するかについて、悩んでいる人が多いと聞きました。私の実践してきたアメーバ経営を「リーダー育成のためのシステム」と指摘する学者もいるようです。今回は叱ること、褒めること、そして教育について根源的なところからお話をしたいと考えます。
そもそも叱ることや褒めることも含めた教育とは、相手の成長を期待しているからこそ行うものです。もし、リーダーシップに必要な才能が生まれ持った資質でしかないのなら、教育そのものが意味のないものになってしまいます。
よいリーダーの資質には先天的なものと後天的なものの2つがあります。
持って生まれた先天的な才能が関係していると思えるのは、例えば友達同士が集まってグループで活動をすると、いつの間にかグループの中心にいて、リーダーシップをとるようになる人がいることです。こうしたケースでリーダーになるのは、先天的に明るく積極的で、人から信頼されるタイプの人が多い。
一方で、集団を正しく導くためのリーダーシップには、人間が教育され、努力して得る後天的なものが非常に大切です。
先天的な資質によってリーダーに選ばれるケースは多いでしょう。しかし、選ばれたあとのリーダーは、その集団がどういう目的で、どういう方向に進むべきか、それに対する明確な目標と意義を示す必要があり、誰よりも努力をしなくてはなりません。
「あの人は強い意志を持っている」などと表現される場合の「強い意志」とは、打算を超え、よきことや正しいことを貫こうとするときに出てくるものです。リーダーにはその強い意志に裏付けられた使命感が非常に大切で、これは経営を行ううえでも絶対に欠かすことはできません。
われわれの多くがまず考えてしまうことは、自分に都合がいいか悪いか、儲かるか儲からないかなどといった利己的なことです。そういったエゴむき出しの本能をいかにコントロールしていくかが大切です。