京セラ創業者にして、JAL名誉会長の稲盛和夫氏。リーダー教育をいかになすか。そもそも教育は可能なのか。名実ともに日本一の経営者である実業思想家は、「高収益体質の極意」を明鏡止水の如く語りはじめた──。
※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/12909)
会社で叱るだけではダメ
部下が本当に困っているとき、苦しんでいるときには、思いやりの心を持って、一生懸命に助けてあげることも必要です。愛情があるからといっても、ただ厳しく叱るだけのリーダーでは、人はついてこないもの。愛情と思いやりを持って育てれば、必ず部下は育ちます。また、部下が育つだけでなく、そのリーダー自身、人間としてひとまわりも、ふたまわりも大きく成長するでしょう。
厳しく叱る一方で「今日があるのは、みんなが一生懸命やってくれたおかげだ」という感謝の気持ちを持つことも大事です。厳しい半面、相手のことを思いやる、人間味あふれるリーダーになるよう常に心がけていれば、部下は必ずついてきます。
その方法は様々ですが、例えば焼き鳥などのちょっとしたつまみで酒でも飲みながら「なあおまえ、そう思わんか」と、心の琴線に触れるような話をしたほうが、部下も耳を傾けるのではないでしょうか。その点で私がコミュニケーションの方法として活用したのが、社内コンパです。私は盛和塾の勉強会のあとにも、経営者のみなさんと一緒に車座になってお酒を飲み、「みなさんの会社でも、こうしてコミュニケーションをとってください」と、率先垂範してみせているつもりです。
京セラでも25年近く前まで、私が実際にコンパと呼ばれる飲み会に出ていって、コミュニケーションをとっていました。仕事を離れれば、上下の関係なく和やかな雰囲気の中で酒を酌み交わしながら、仕事について、人生について、お互いに語り合う。それが京セラのコンパです。決して、居酒屋で会社や上司の悪口をこぼす、後ろ向きの飲み会ではない。そのコンパのうち盛大なものが忘年会で、社員が1000人を超えるようになっていたころでも、すべての職場の忘年会に、必ず私は参加していました。
コンパで一杯飲んでいると、そのうちに上司と部下という関係がだんだん崩れてきて、建前ではなく本音が出てくるもの。そうするとこちらも本音で議論しますので、誤解がなくなり正しい理解が進みます。
コンパの席では、誰がどんなことを思っているのかもおおよそわかる。一生懸命に頑張ってくれる人には、「お願いします」と言うし、間違っている人には、「その考え方は間違っている」と話す。