ウオッチ(3)アメリカで発見「チーズケーキの天ぷら」
さて、ここでトランス脂肪酸を世界各国はどう見ているかについて、少し解説しましょう。
WHO(世界保健機関)およびFAO(国際連合食糧農業機関)ではトランス脂肪酸の摂り過ぎによる健康被害を懸念し、「1日当たりの摂取エネルギー量に対する、トランス脂肪酸の摂取割合」を、最大でも1%未満にするよう勧告しています。
「洋食は脂肪分が多い」というイメージ通り、トランス脂肪酸を摂る機会の多い欧米では、この摂取量を減らすための取り組みが10年ほど前から始まっています。特にトランス脂肪酸の摂取量の多いアメリカでは(摂取割合:2.6%)、加工食品のラベルにこの含有量を表示することが義務付けられています。
「チーズケーキの天ぷら」(写真)がレストランのデザート・メニューにあるくらいですから、“アメリカ政府の焦り”も納得です。
日本の場合、内閣府食品安全委員会の報告によれば、トランス脂肪酸の平均摂取量(0.3%)は、WHOの勧告(1%)を大きく下回っています。洋食に比べて格段に脂肪分が少ない和食のおかげですね。
現時点では、トランス脂肪酸に対して神経質になるような状況ではないようです。
けれども、洋食中心の食事をしている人、市販のマーガリンや“ホイップクリームたっぷり”のケーキ、パイ、スナックなどの菓子類を食べる機会の多い人は、「トランス脂肪酸の健康被害は“対岸の火事”」と涼しい顔をせずに摂り過ぎに気をつけたいものですね。
最近、いろいろな情報が溢れているため、トランス脂肪酸に対して敏感に反応する人がいるようです。健康に注意する意識は大事ですが、トランス脂肪酸に神経質になる余り、様々な食品を避けたり、食べる量が減ったりすれば、かえって栄養が不足したり、栄養バランスが崩れたりすることも容易に想像できます。
そうなれば、トランス脂肪酸以上の健康被害に悩むことにもなりかねません。どのような食品でも食べ過ぎには注意が必要です。1度に食べられる量ではないものの、砂糖にも致死量があるくらいですから。「何事も、ほどほどに」が肝要です。
最近では、トランス脂肪酸フリー(ゼロ)のショートニングなども登場しています。これは、植物油を人工的に固めた“脂”を使わず、飽和脂肪酸*の多い天然の“脂”(パーム油など)を使った商品です。
今後、このようなトランス脂肪酸量を減らした商品が次々に登場することを期待したいところです。現時点では、トランス脂肪酸量を摂り過ぎないためには、(1)洋食中心の食事ばかり食べていないか、(2)洋菓子類やスナック菓子をむやみやたらに食べ過ぎていないか、を振り返ることが大切です。毎日、栄養をバランス良く十分に摂りながら、加工品に含まれるトランス脂肪酸の量に目を光らせたいものですね。
スーパーで見かけた男性グループが“男子会”で大いに盛り上がり、楽しい時間を過ごせますように。