【伊藤】先ほど、小西さんがおっしゃっていたネーミング化も、それだけ見るとテクニックみたいだけれど。相手のことを考えた場合、10分のプレゼンが終わったときに、キーワードがひとつ残っていればいいわけです。拡散した話をギュッと絞ったらこのキーワードになる。相手はこういう思考回路を経て、ここに至るとイメージしながら語れるかどうかというのは重要ですね。
【小西】上層部にいくほど、忙しくて1件にかけられる時間がないじゃないですか。担当者が1年間頑張った結果を社長の前で10分プレゼンするのでも、1年間の頑張りをこの10分に集約しようとすると間違っちゃうんですよね。10分で100喋ろうとしちゃう。でも、1しか喋っちゃダメなんです。ザーッとそぎ落として、この状況でこうでしたというのだけを示して、「ああ、まあ、いいんじゃないか」と社長に言わせれば勝ち。
【伊藤】相手を迷子にさせないというか、きちんとガイドするというのは重要ですね。セミナーで話すときに、だらだら喋りだすか、大事なのが3点ありましてと始めるかで、聴衆の反応は全然違う。大事なことが3点ありますって言うと、みんなペンをとって1って書くんですよ(笑)。
【小西】僕が講演でやるのは「今から言うことは大切ですので、メモの用意をしてください」と言って、スライドを投影する。そこにはものすごく細かい文字が何百字も書いてあって読めないので「バカな……」と笑いが出る。でも「これが皆さんのいつもの企画書です」って言うんです。で、「これが正しい企画書の書き方です」と言って文章の一部だけ赤くして見せる。そこだけは読めるようになるでしょ。必要なのは残すこと。
ここだけ見ればいいですからって言ったら、そこだけは見てくれる。
【伊藤】広告のコピーって、そういうことなんですね。いろんなことをひと言にギュッと。
【小西】集約しているんですね。これだけを覚えてくださいと。
プレゼンでも肝心なのは、相手がなにを持って帰るか、どう考えやすくするかだから、写真でも、ネーミングでも、目標でもかまわないので、一番、相手に持って帰ってもらいたいものを明確化して示す。それでいけると思います。聞いている人を味方にするというか、巻き込む作業なのですね。巻き込めたら勝ちです。