モメンタム(推進力)を起こす

さきとう・よしあき●リアルディア社長。1958年、愛知県生まれ。慶應義塾大学大学院管理工学修士課程修了後、84年ソニー入社。ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー・ジャパン、AOLジャパンなどを経てライブドアを創業。2002年にライブドアの営業権を堀江貴文氏率いるオン・ザ・エッヂに譲渡後、04年、アップル米国本社のバイスプレジデントと日本法人代表に就任。iPod miniを大ヒットに導き、日本市場で同社を復活させることに成功した。07年にリアルディアを創業し、現職。クリエイティブ・プレゼンテーション講座などを手がける。表情豊かになる革新的なアプリ「FACE」も好評。現在、フジテレビ「めざましテレビ」のレギュラーコメンテーターも務めている。著書に『僕は、だれの真似もしない』『人を感動させる仕事』がある。 
リアルディア 
http://realdear.com/

前回に引き続き、かつてスティーブ・ジョブズ氏に日本を任された男とされる前刀禎明さんに、人を動かすようなパワフルなプレゼンや人に話を伝える際の方法論をうかがった。

ジョブズ氏のプレゼンは広告費に換算すると数十億円の波及効果があるのではないかと前刀さんは分析し、人に伝えるためには、ジョブズ氏が起こしたようなモメンタム(推進力)が必要であるという。モメンタムとは「勢い」「気運」や何か物事を動かす「推進力」のことをいう。たとえば、ジョブズ氏のプレゼンは、新たな製品が出されるたびに、その製品を動かす推進力となる。プレゼンでデマンド(必要性)が生じたあとは、どうしてもそれが欲しいというデザイア(欲求)が生み出される。つまり、こんな流れだ。

モメンタム(推進力)→デマンド(必要性)→デザイア(欲しいという欲求)

「プレゼンは、人の”共感”を生み出して、最終的に行動を起こさせることです。それを“使っている自分”を想像させ、共感をしているので実行してみたい、買ってみたいという欲求を生み出します。最後に“自発的に人に行動してもらう”ことまでを含めてプレゼンテーションです」

自分たちの日常に落としてみても、企画プレゼンをするときや何かを売り込むときなど、最終的に相手の理解や、共感が得られないことには説得には成功できない。

「話の論理が破たんしていて、伝えたい内容を理解すらしてもらえない人が多いようです。ベースとしてロジカルシンキング(論理的に構造を考えていく)を大切にすべきだと思います。つまり、伝えたいことを伝えるために、どういう道順をたどるべきかを考えることです」

たとえばインターネットのサイトを構築していくときには、ツリー構造でまずトップの主題から枝分かれしてサイトの流れを考えていく。同様に、話したい内容が相手に理解されやすく、問題解決への道筋がスッキリ通るようにイシュー・ツリー(問題解決の流れ)などで説明を組み立てるべきなのだ。

「ただし、ロジカルな構造はベースにすぎません。論理的に理解できても今度は『どこか腑に落ちない』ということが起こります。そこにあるのは“共感が得られない”という問題です」

共感してもらえないことには、その先の展開などさらに高い次元のプロセスに持ち込むのは難しくなる。結局、論理だけで人は動いてはくれない。では、論理を組み立てたあとは、何をすべきなのだろうか。