聞き手の想像喚起がモチベーションへ

「このルンバがあることで、床がきれいに掃除される以上に、実は部屋が片付くんです。なぜでしょう? それは製品に感情を移入していくからです。目に見える“既存価値=ロボットが掃除をしてくれる”ことにすぎませんが、エモーショナルな部分で『ルンバちゃんがかわいい』と感情移入をすることで、ルンバが物にぶつかると『かわいそう』だからと自発的に部屋を片付けていく。そうした現実的に目に見える機能以上のメリットを“見せる”わけです」

いかに「自分」に当てはめて捉えてもらうか、自分が使っている姿を想像してもらうかが、行動のモチベーションにつながっていく。ならば、スライドなどを使って目で見せる工夫をすることで、聞き手の想像を手助けすることができる。ルンバが家にやってくれば、かわいいルンバちゃんを傷つけないために”部屋を片付ける”。そんな事例を見せてやるのもひとつだろう。

こうした“ロジカルシンキング+α”の伝え方が「目に見えない」「感覚的な面」を伝えて刺激するために有効に働き、最終的には人を動かしやすくなる。“+α”はその話し方から見せ方までさまざまながら、その場では見えない部分を提示するためにスライドやデモは有効に働くだろう。ロジカルに考えを通したら、感性に訴えかける目に見えない部分をいかに伝えるか、想像をかきたてるかの創意工夫をすることが必要となるわけだ。

次回は、効果的に伝わるスライドづくりに必要な「0.1秒の感覚」や、思考を着手する前にすべき「発散思考と収束思考」などの前刀さん流の方法をお伝えさせていただこう。

[参考資料]
*Deborah Tannen , You Just Don't Understand:Women and Men in Conversation, 2001, William Morrow Paperbacks

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