見出しがつけられる話の要点の絞り方
ハーバード大学のショーン・エイカー氏の「幸福と成功の意外な関係」は、TEDで人気のプレゼンのひとつである。エイカー氏の理論がとてもおもしろいのだが、それ以上にプレゼンのスタイルとユーモアが秀逸。最初に7歳の頃のエピソードで笑いをとり観客の気持ちをグッと引き付けて、自分の味方にしてから本題に入る。それは、アル・ゴア元副大統領の地球温暖化に関する有名なプレゼンと同じ手法で、相手がひとたび「YES」と自分を受け入れた瞬間から、ほぼそのプレゼンは成功したに等しくなるものだった。
まずは本題の提示の仕方をみていこう。氏のプレゼンはユーモアあふれ……というレベルではなく、大爆笑で笑いが終わるのを待つほどのおもしろさ。スピーディで音声を少し早回ししたかのような印象で話しが流れて展開する。それでも話がわかりやすいのは、話の塊ごとに「見出し」がつけられるからだ。つまり、話すごとにはっきりとした要点があるため、雑誌などで各テーマの間に「中見出し」がついているかのように、きちんと的が絞れることによる。では、軽く全体の流れを見て行こう。
・「幸せ」を決めるのは「環境」ではなく、脳がその環境をどう処理するか
エイカー氏はこんな風に問いかける。
「自分がどんな状態になったら“幸せだ”と言えると思うでしょう? 『会社で昇格したら』『あの会社に転職できたら』……など、環境によるものを思い浮かべているでしょうか? ハーバード大学での競争にストレスを感じる人もいれば、同じ状況で、ここにいられて幸せと思う人もいます。必ずしも現実が私たちを形作るのではなく、“脳が世界を見るレンズによって私たちの現実は形作られる”ということです。そのレンズを変えれば、自分の幸福を変えられるばかりでなく、あらゆる学習や仕事の結果を変えることもできるのです」
つまり、自分が幸せかどうかは環境が決めるのではなくて、環境を自分の脳がどう捉えるかで決まってくるというわけだ。
では、そのときに、どう脳が働くのだろう……そんな疑問がわいたところで、聞き手の興味をそのまま引きつける次の見出しが「脳の定義の再設定」といった内容で展開されていく。内容はこんなものだ。