※本稿は、ミレイユ・ジュリアーノ著、羽田詩津子訳『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。
ずっと体重と格闘してきた35歳のカミール
35歳のカミールはずっと体重と奮闘してきた。肥満というわけではないが、彼女の身長(155センチ)だと、12、3キロは明らかに余分だった。自分でも、ぽっちゃりして見えると感じていた。ときどき、さまざまなダイエットを試みた。結局、彼女自身の分析によれば、問題はたんに遺伝子のせいということになった。肥満傾向が家系に遺伝しているのだ。とりわけ彼女の母親はずっと太っていた。したがってカミールは心の底で、体重を減らそうという努力はうまくいきっこないと信じていたのだ。
クリコ社がある会社を買収したときに、カミールは入社した。彼女にはすばらしいビジネスの技術と経験があったからだ。だが企業社会は非情で不公平だった。とりわけ贅沢品を扱うビジネスでは、イメージが重要だ。あらゆる企業において、外見は男性よりも女性にとって重きをなす。カミールの仕事には、定期的に国じゅうを回り、クライアントと食事をすることも含まれていた。
わたしたちの会社に加わって丸1年して、最初のニューヨークの冬を越しても彼女の体重が調整されなかったことが明らかになった。寒い季節用の厚手の服は余分な肉を隠してくれたが、いったん春になれば、パニックに陥るだろうとわたしは予想した。頻繁な出張と接待の時期がやってくるからだ。
敵は「夜11時過ぎに飲むビール」
わたしたちはとてもいい関係を築いていたので、ある日、彼女に調子はどうかとたずねると、悩みを打ち明けてくれた。わたしは自分自身の思春期における体重の災厄と、それを簡単な生活の変化だけで元に戻すことができた話をした。カミールは3週間のあいだに食べたものを記録することを承知した。
最初の1週間の記録をひと目見れば、簡単に大きな「敵」を発見することができた。まず、ビール。カミールは家にいても町に出ていても、毎晩「喉が渇く」らしかった。
そこで、しばしば11時過ぎにビールを飲んでいた。夜遅くビールを飲むことは、わたしには奇妙に感じられた。とりわけレストランで食事といっしょにワインを飲んだあとなのだ。カミールは飲酒問題を抱えているのか? いや、彼女のアルコール摂取量はそれほど多くないし、そうした問題の兆候は他にはまったく見当たらなかった。