社内企画書、会議の議事録、そしてお客さま向け事業提案書……。会社のなかにはさまざまな書類があふれている。どのように書いていったら仕事がはかどり、成果もあがるのか? 元ソフトバンク社長室長、ジャパン・フラッグシップ・プロジェクトの三木雄信社長が語る、孫正義流文章テクニックとは。
社内での新規プロジェクトの検討は、一般的に「企画書」の作成から始まる。今回、例として挙げるプレジデントソリューション社は、クライアントのサイトをヤフーやグーグルなどの検索エンジンの上位ページに表示させるSEO(検索エンジン最適化)サービスで、業界トップの企業だ。
その同社がベンチャー企業向け成果報酬型の新卒紹介事業を企画した。SEOのノウハウと実績を活用し、独自に就活サイトを立ち上げて優秀な学生を集める。そして、ピンポイントでクライアント企業に紹介していく。しかも、内定した段階で初めて料金が発生する点で、既存の採用支援会社と一線を画している。
企画書というとひと昔前まではA3サイズで分厚く、広告代理店や官庁が作成するものは製本までしてあった。しかし、企画書の役割は経営トップなどの決定権者や関係部署の人たちに「面白そう」「詳しく聞いてみたい」という気持ちになってもらうことにある。
だから、パッと見て、読み手の興味を引きつけなくてはいけない。私が働いていた孫正義社長率いるソフトバンクでは、パワーポイントを使って「ワンシートにワンメッセージ・ワンビジュアル(写真・グラフ・図解など)」が基本だった。
それというのも、孫社長に提案をする場合は、最初の10秒で彼の気持ちを掴まなくてはだめだからである。その出だしで失敗すると、「もういいよ」と即却下だ。
いまや、プレゼンテーションでパワーポイントを使うのが当たり前。パワーポイントのシート4枚分の企画書を作ったのであれば、それをA4用紙1枚にまとめたらどうだろう。そのほうが一つひとつのメッセージが研ぎ澄まされ、インパクトが強まるはずだ。
詳細は次ページのビフォー、アフターをご覧いただきたいのだが、どうしても気になる点をいくつか指摘しておく。「新規プロジェクト企画書」というタイトルを孫社長に見せたら、「何がいいたいんだ! 後回し」と横を向かれてしまうのが関の山だろう。タイトルはオリジナリティー溢れるプロジェクトの内容が、一目でわかるものにしよう。
また、新プロジェクトを個条書きで書き出すことはいいのだが、いかんせん数が多すぎる。一般的に人間が一度に把握処理できる数は「7プラスマイナス2まで」といわれる。しかし、私は5でも多いと思う。一目で見て理解してもらおうというのなら、せめて3つくらいにとどめておきたい。