【伊藤】先ほどのキーワード化ですけれど、それに気がついたのは3年半前にソフトバンクアカデミアという、孫正義さんの後継者を育成する虎の穴みたいなところにいたときのことです。新規事業プランのプレゼンで、これはグチャグチャ説明しても覚えてくれないだろうなあと。で、これはなにかと考えて、キッチリくるから「キチリクルン」としたんです。

で、実際に「キッチリくるからキチリクルン、キッチリくるからキチリクルンなんです」と言って、あとは5分間、いろんな話をした。僕のあと30人ぐらいプレゼンしたのですけれど、終わってから「なんだっけ、キチリクルン? キッチリくる」って孫さんが話しかけてきた。孫さんの頭に「キチリクルン」がインプットされていたんです。これって大事だなと、そのとき勉強しましたね。

拡散させていく部分はテクニック。見やすいグラフを作るとか、デザインはシンプルにとか、僕が最初に言った3原則のようなものは、ここでカバーされるわけです。

でも、それをギューッと絞り込んでいく作業を、たぶん多くの人がやっていない。一般のビジネスマンは、そこのプロセスを軽んじているのかもしれないですね。

【小西】今後、絶対必要になってくると思うんですよね、それをすれば、みんなが動きやすい。

【伊藤】資料を作るときって、最初はとにかく拡散させます。ものすごい分量になって、そこからポイントを絞り、言葉を削り、ストーリー化していく。それが収縮のプロセス。これは、ほぼ気合と根性の世界です。

【小西】僕の場合は、先にキーワードを作ることも多いです。キチリクルン(笑)を先に作るんです。なんとなく、短い言葉をぼんやりとひたすら書く。するとこれは面白そうだなと思うやつが出てくる。そこから逆算すると、ピタッと合うときがあるんですよ。

【伊藤】ただ、ロジカルだけでは鼻につくし、面白くもない。そこをどう表現するのかというのは、たぶんあって。鼻につかないようにするというのは大前提だし、そうは言っても、ロジックは、8割方繋がっていないと、なにを喋っているかわからないのですけれどね。