「生き方と道徳」も受講者が多い。

「いきなり二宮尊徳や上杉鷹山を説くのではなく、今の問題を結びつけなければ学生も興味が持てない。講義の導入部は、食品偽装など最近の社会問題です。あるいは、なぜ教師が体罰を行うのか、なぜ学生が自殺するのか、そういうときの校長のマネジメント力のヒントが、実は稲盛さんの中にあるという具合です」

いずれも週1回、2単位。ただ、開講5年という区切りを迎えて講義を再構成するというが、いずれにせよ稲盛さんを神格化しないことが大学人としての務めだと神田氏は言う。

「受講した学生が書いたアンケートに『稲盛さんはいいけどオレは違う』というのがけっこうある。いつかわかってくれるとは思いますが、今すぐどこかへ誘導する気はありません」

アジアへと広がり始めた稲盛哲学。そこから何が生まれるかを期待するとともに、日本人としてひそかに誇ってもよいことではないか。

(芥川 仁=撮影)
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