“モラル資本主義”の典型が稲盛氏
学生の反応が「凄くいい」という講義の一部をご紹介いただこう。
神田氏が関わった講義の一つに「20歳からのハローワーク」がある。稲盛氏の著書『働き方』をテキストに、仕事の現場を学生に知ってもらうため、地元鹿児島の中小企業経営者5人をゲスト講師として招聘、150~200人の学生の前で1回に1人ずつ、経営者の考え方や、現場で社員と一緒に取り組んでいる事柄について話してもらう。
ゲスト講師と学生の質疑応答の時間も設けるなど形態を多様にして、学生たちに職業選択や労働について具体的に考えてもらう機会を提供する。授業の最後に質問用紙を配布し、学生たちに働き方についての意識調査も行っている。
もう一つ。「人間力経営」は、稲盛氏の著書『アメーバ経営』を中心に据えた講義だ。
「稲盛さんのことだけ喋っても偉大さがわからないので、同じく人間力を説いた渋沢栄一や大原孫三郎などいろいろな人を紹介しながら、稲盛さんをクローズアップしています。今、世界的な話題になっているコー円卓会議(CRT)が掲げる“モラル資本主義”も講義で取り上げましたが、稲盛さんはまさに“モラル資本主義”の典型です」
受講生が500人超詰めかけ、削るのに一苦労するという人気ナンバーワン講義が「国際平和と有徳」だ。
「メーンテーマは“足るを知る”。哲学者の梅原猛さんとの共著『人類を救う哲学』を参考にしています。資本主義社会で競争は不可欠。ただ、競争という言葉は弱肉強食のイメージが出てしまうので、あえて競争ではなく“切磋琢磨”と呼んでいます。お互いに頑張ろうという意味合いがあり、そこに自立がある。“努力せよ”という言葉は、“依存するな”“自立せよ”と言い換えてもいい。そういうところも学生に受けますね」