「人間力を学ぶ」の理念のもと開講された「稲盛アカデミー」。稲盛氏直々の指名で特任教授となった神田嘉延氏が教えるその独特のカリキュラムとは──。
留学生の熱気に気圧されて……
稲盛和夫氏の母校・鹿児島大学で、全学共通の選択必修科目として開講されているのが「稲盛アカデミー」だ。稲盛氏個人と京セラの寄付により、2005年に設置された「稲盛経営技術アカデミー」を08年春改組したものである。初年度は45科目を開講、前後期合わせて3207人の学生が受講した。
12年度から「社会人向け履修証明プログラム『稲盛経営哲学』」も開講。14年度からは、地域や国際社会の発展を目的とした社会活動の現場へ学生を参加させ、進取の精神の習得を目指す「進取の精神体験学習i n鹿児島」「進取の精神海外研修inベトナム」の2科目を新たに加えている。
授業はすべて日本語で行うにもかかわらず、少なくない割合の学生はアジア各国からの留学生だ。
「ベトナムやインドネシアの学生は、いつも一番前で聴いてますよ」
そう語るのは、ここで初年度から特任教授として教鞭を執ってきた神田嘉延氏だ。神田氏はもともと鹿児島大の教育学部の教授で、僻地教育を専門としていた。
「もちろん稲盛さんは鹿児島大OBで尊敬する経営者の一人。ベストセラーになった著書『生き方』を学生に紹介したり、最終講義でも彼の人間観について講義しました。私は中小企業同友会という経営者団体との付き合いが長いのですが、その中に稲盛氏の私塾『盛和塾』のメンバーが多いという縁もありました。ただ、直接的には教え子のベトナム人留学生が稲盛さんをすごく気に入ったから。彼が稲盛さんの著書『君の思いは必ず実現する』をベトナム語に翻訳して出版したんです」
僻地教育は地域をどうすれば豊かにできるか、過疎地域でいかに人口を増やすかが研究課題だが、その神田氏の研究室には20年ほど前からベトナム、中国、韓国、インドネシア、タイなどアジア各国の留学生が来るようになっていた。