※以下は稲盛和夫『活きる力』(プレジデント社)からの抜粋です。
人生の方程式について
ここで、私は皆さんに、私が考えた「人生の方程式」を紹介しながら、考え方がいかに大切か、ということについて、さらにお話ししたいと思います。
人生の方程式とは、「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」というもので、私が20歳から30歳までの間に考えたものです。
どうも人生は、この3つのファクターの積で表せるのではないか。3つのファクターは掛け算ではなくて足し算される、と言う人もありますが、私は足し算ではなくて、積でかかると思っています。
能力は、頭の良し悪しのみならず、肉体的な能力や健康状態も含みます。
これは、もともと生まれながらにして自然から与えられたものですから、後天的に変えられるものではありません。この能力というものは、人生にとっても仕事の面においても、非常に大きなファクターになります。
もう一つは熱意です。先ほども言ったように、偉大なこともみんな一歩一歩の積み上げでしかできないのだから、誰にも負けない努力をしよう、一生懸命頑張ろう、そういう考え方、熱意を持つのです。熱意を持つということは、能力と違って後天的に自分の意志でできます。今言った、能力と熱意には、ゼロからプラス100点まであります。
考えてみますと、私は、鹿児島大学という、当時では地方の一新制大学にすぎない学校を出たわけです。学校では若干勉強したつもりではありましたが、やっぱり都会に出てくると、たとえ京都のボロ会社とはいえ、私が受けてすべった大阪大学や京都大学といった優秀な大学を出た人がたくさんいる。その中では、どうしても能力の面でコンプレックスを抱いてしまいます。
その私がそういう優秀な人たちと競っていこうと思えば、どうしたらいいのか。能力がないから、一生勝てないのか。いや、そうではない、一生懸命努力すれば、つまり熱意があればやっていけるはずだ、それが、「能力×熱意」という考え方を思いついたきっかけです。
たとえば、一流大学を優秀な成績で卒業したという人間でも、自分は頭がいいからと思ってなまけてしまう。一流大学を出たわけですから、能力という点では70点、あるいは、80点かもしれない。しかし、努力をしないから、熱意は30点しかありません。すると、80点×30点=2400点となります。一方、地方の新制大学しかでていない人間の場合、能力は60点ぐらいでしょう。
しかし、頭がよくない代わりに一生懸命努力をしようと思って80点の熱意を持てば、60点×80点=4800点になる。つまり、一流大学を出た人間の倍の結果が得られるわけです。
さらにそこに、考え方というファクターがかかってきます。