ふつうの「営業」「事務」も残業代ゼロ
今回の改正案は、これらの煩雑さを解消する、ほぼ満額回答に近いものだ。
手続きでは本社への一括届出制を認め、定期報告も導入半年後に1回だけでOKとなったほか、新たに次の2つの業務が追加された。
(C)課題解決型提案営業
(D)事業の運営に関する事項について企画、立案調査および分析を行い、その成果を活用して裁量的にPDCAを回す業務
課題解決型提案営業(C)とは、いわゆる「ソリューション営業」のこと。お客のニーズを聞いてそれにふさわしい商品やサービスを販売する営業職だ。
具体的には店頭販売やルートセールスを除く法人営業職のほとんどが対象になる。ちなみにBtoBの営業・マーケティング従事者は約314万人だが、その大半が対象者になる可能性もある。
(D)はわかりにくいが、営業以外の事務系の業務を指す。個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務経理業務は除くとしており、一般にいうブルーカラーや定型業務以外の業務はほとんど入る可能性もある。
そもそも裁量労働制(2)の導入に際しては条件がついている。
それは「対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと」で、社員は出退勤時間が自由であり、仕事を効率よくこなせば早く退社できるメリットがあると言われている。
▼「実力にあった待遇」「勤務時間拘束ない」?
では新制度(A・B+C・D)についてサラリーマンはどう考えているのだろうか。日本経済新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが共同で20~60代の会社員を対象に意識調査を実施している(『日本経済新聞』2015年5月5日朝刊)。
制度導入の賛否については、
「反対」「どちらかといえば反対」の合計が52.7%
「賛成」「どちらかといえば賛成」が47.3%
反対派がやや上回っているが、その理由として
「残業代がなくなる」
「想定よりも勤務時間が長くなることが多い」
「成果によって評価するといいながら、納得できる評価法にならない」
という回答が上位に上がっている。
興味深いことに賛成派の理由は反対派の逆の評価をしていることだ。
「勤務時間を拘束されない」
「時間を気にせず、仕事の段取りを自分の都合に合わせて進められる」
「実力にあった待遇を得られる」
と回答している。