「受け取り手」目線で物流を考える
【竹内】中期経営計画でも謳っている「高速かつ高効率」なゲートウェイネットワークが実現しつつあると。
【木川】小倉さんは、社訓をはじめ創業の精神を大切にしなければいけないと言いつつ、守るべきものと変えるべきものがあると言っています。変えるべきものは、時代とともに変える。徹底した省力化投資をしてコストを削減する。それによってサービス品質をさらに上げていく。
【竹内】常に小倉さんを意識されているのですね。
【木川】私がヤマトグループに来た時には、すでに小倉さんは経営から離れていたので、直接薫陶を受けたわけではないのですが、社内には至るところに小倉イズムが残っていました。社員一人ひとりに染み付いているという表現のほうが適切かもしれません。これを壊すわけにはいかない。今後もずっと守り続けていきます。ただ世の中の変化にあわせ、やり方を変え、サービスを進化させていくことは必要です。
【竹内】一方で、宅急便以外に事業領域を拡げていくと、理念の浸透が難しくなることはありませんか。メインの宅急便の事業に関わる社員、たとえばセールスドライバーが「自分が理念の体現者として気持ちを込めて荷物を運ぼう」と受け止めることはイメージできるのですが、たとえばグループ企業でBtoBの事業に携わっている人には、理念で掲げていることと自分の仕事に距離感があったりしないのでしょうか。
【木川】グループ会社も含め、我々は常にエンドユーザー目線で物流を考えようといっています。たとえば企業のロジスティクスは、一般には「サプライチェーン」と呼ばれますが、我々はそれを「デマンドチェーン」として捉えています。調達納品物流において、出す側ではなく、納品される側の目線からであれば見え方が変わる。たとえばチェーンストアのお店の立場からいうと納品のトラックがバラバラと来るよりも、まとめて納品してもらったほうがありがたいはずだ。じゃあ、そうしたサービスを開発しよう、と受け取る側の利便性から考えるのは、宅急便の商品開発の思想と同じなのです。