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ビジネスシーンでの災い転じて福となす謝罪の方法

そして、相手方と面会したら、「誠に申し訳ありません。ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」と頭を下げる。これだけで許してくれる場合も多いという。だがこのときトラブルの原因や弁解などをすぐ口にしてはいけない。言い訳と取られるのがオチだ。

「頭の下げ方は『深々と』が基本です。両手両足をそろえて上半身を45度くらい前に傾ける。時間にすれば、その最敬礼の状態でゆっくり3つ数えるくらいの長さは頭を下げたままにする。そうするとお詫びの余韻が残ります。自分としては深々と下げているつもりでも、人から見ると首だけちょっと下へ向けた程度にしか思えないことはよくあります。こんなときぐらいは人生最高のお辞儀をしてください。先方が複数人出てきた場合は、一人ひとりに頭を下げてお詫びします。もちろんポジションの軽重で頭の下げ方やお詫びの言葉を変えるような真似をしてはいけません。またお詫びして退出するまで、相手が許してくれそうだと油断して笑顔を見せてはいけません。心から申し訳ないと思っている表情を崩さない気構えが必要です」

帰社後は、改めてお詫び状を必ず自筆で書いて郵送することも重要だ。繰り返し謝意を述べると誠意の度合いが深まり、不祥事が「マイナス10」であっても、その繰り返しが「プラス14」のポイントを得て、差し引き「プラス4」となって、相手はこちら側の言い分を広い気持ちで受け入れてくれることもある、と高井氏は語るのだ。

「謝罪は、絶対に形式的・建前的・マニュアル的になってはいけません。そんな謝罪は心や姿勢の問題であることを知らない者がすることで、そうした行為からは、相手の心を溶かすだけの誠意や謙虚さがにじみ出てくるはずがありません。コップ1杯の水の中にも人間の心が入っているかいないかは、一瞬にしてわかるものなのです」。

●正しい謝罪の注意点

・謝罪先で出されたお茶には手をつけない
・タバコは吸わない
・椅子には浅く腰掛けて背筋を伸ばす
・すまなそうな表情を崩さない
・マニュアル的な謝罪は絶対回避する
・誤解を解くための弁解は必要だが、保身的なエゴ弁解(言い訳)はしない

高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。
(大塚常好=構成)
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