相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。
モタモタしないで、すぐに駆けつける。謝罪の9割は、それで完了する!
「潔く詫びることで顧客や取引先などの心を癒やし、またこちらも許してもらうことで癒やされる。これを実現したときに謝り上手と評価され、ビジネスパーソンとして信用も得るのです」
こう語るのは、高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏である。
これまで高井氏は礼を尽くした謝罪を欠いたばかりに、営業面で大きなダメージを受けるケースをたくさん目撃してきたという。ピンチをチャンスにする気概で顧客や取引先の相手の心に響く謝罪の基本手順を知っておきたい。
「やってはいけないのは通りいっぺんの粗雑な謝り方です。謝罪する相手が誰でも重要なのはこちら側の失策・失敗・無礼に対して、相手が最も重要視している視点は何かを把握すること。これが謝罪の手順その一です。人間は個々の価値観・性格がみな異なっており、同じ失策でも『そんなことは別に気にしない』という人もいれば、『逆鱗に触れたように怒る』人も。怒りの発火点の核心を掴むことが重要です」
謝罪を求めてくる側の怒りは、たいていは期待や理想と現実とのミスマッチから発生する。したがって、相手側の期待や理想とは何か、それらと現実との間にどのようなギャップが生じているのか、という根本的な部分を認識すれば的確な謝り方もでき、関係の修復に乗り出すことも可能だというのだ。
仕事上のトラブル発生時に動揺するからなのか、案外こうした基本的な心構えができていない人が多いという。
「トラブルが生じたらアポなど取らなくてよいから、何はさておき相手のもとに駆けつける。これは鉄則ですが今の若い人はできない。相手が留守なら『こういう事情でお詫びにまいりました。改めてまた伺います』と当人以外の人(秘書、同じ部署の人など)に告げ、このとき、自分の名刺に同様の趣旨を書き込んで置いてくるのです。相手が怒っていて、面会を拒絶されることもあるでしょうが、何度でも足を運ぶ。三顧の礼をされると、相手も『自分を立ててくれた』と感じ、怒りも徐々に鎮まる。会ってくれないからとお詫びメールで処理してはいけません」