12年の年末に58歳でパナソニックを早期退職した真野は、直前までパナソニック全体のデザインのコンセプトなどをまとめる管理職に就いていた。しかし、「現場に戻りたい」との思いを募らせ、13年2月に大阪R&Dセンターのスタートメンバーとして入社。デザインのリーダーとして衣類乾燥除湿機やサーキュレーターの開発に携わる一方で、持ち前のリーダーシップを評価されて就いたセンター長の仕事も加わり、多忙な毎日を送っている。
「角田のスタッフとはテレビ会議システムを通して、毎日顔を合わせています。常務の大山を交えたプロジェクトごとの『週次会』や、デザイン、マーケティングなどの打ち合わせも、センターのなかに2つあるテレビ会議システムを利用して行っていて、ほとんど支障はありません」と真野は語る。
そのテレビ会議システムはテレビモニターとカメラが各2台ずつ設置され、相手の表情の変化だけでなく、手元の試作機なども同時に映し出されるように工夫されている。角田の大山の部屋にも同じシステムがあり、毎週火曜と水曜に開催される週次会では、品質管理、特許、金型設計など関連事業部のスタッフが多いときには30名も集まって、大阪のスタッフとの間で丁々発止の打ち合わせが行われる。
「どんな人間が自分のプロジェクトに関わっているのか一目瞭然で、個別の打ち合わせや相談もスムーズに進みます」と大山はいう。しかし、商品開発では微妙なニュアンスを伝えるために、直に相対したコミュニケーションが必要になることもある。そこで大山は月に2回は大阪へ赴くようにしている。
実は真野がセンター長に就任した際、中途社員のモチベーションアップを目的に、大阪にいたプロパーのスタッフは全員角田に引き揚げた。しかし、自分のプロジェクト以外の角田のスタッフとの面識がなかったり、細々した社内ルールに疎かったりして、いちいち角田サイドに照会するなど、仕事の円滑化の点で真野の頭を悩ませ始める。
そこで、14年10月に角田から赴任してきたのが空調家電のマネージャーを務めるプロパーの淡路雄一で、中途社員の悩みごとに丁寧に対応してくれ、真野も負担が減ったという。こうした細かいケアも、中途社員の活用のポイントなのだ。