そうした企画が日の目を見るかどうか、最後の関門として待ち構えているのが、毎週月曜に角田ITPで開催されている「プレゼン会議」だ。社長の大山をはじめ並み居る幹部を前に、企画の発案者が一人ひとりプレゼンを行う。そして、社長の大山がその場で即断即決していく。
しかし「何のための改善や。もう一度見直し」など、ベテランプロパーの淡路や原でさえ、NGを言い渡されることが度々ある。中途社員の西谷は「これまで2回ダメ出しをくらった」と悔しそうに話す。が、その後にすぐに「昨年の秋に初めて社長にOKをもらいましてね。でも、その内容は企業秘密ですよ」と楽しげに言葉をつなぐ。
いま西谷は、調理家電の試作機を家に持って帰って自分で調理をし、その味を妻にも確かめてもらい、開発に活かしている。仕事の空き時間を見つけては、センター近くの家電量販店回りでの売れ筋チェックも怠らない。最近気になったのは担当したノンフライ熱風オーブンの店頭でのポップの文言で、「フライなどの惣菜を温め直す“リクック”の機能をもっと強調したほうがいいのでは」と口にする。もはや、単なる“設計屋”ではないようだ。
「14年度の家電事業の売上高は480億円の計画(グラフ参照)ですが、近い将来には少なくとも1000億円規模に持っていきたいし、十分に達成可能な数字だと見ています。その中核となるのが大阪R&Dセンターで、家電関係については角田のスタッフや設備もこちらへ移管・集約していくこともありえるでしょう」と大山は語る。
中途社員とプロパーが一丸となったアイリスオーヤマから、どんな家電関係の新商品が誕生してくるのか、一時も目を離せそうにない。また、そうすることで、大企業出身の中途社員の活用に関する学ぶべき点も数多く見つけられるはずだ。
(宇佐見利明、加々美義人=撮影 アイリスオーヤマ=写真(プレゼン会議))