果敢に挑み始めた企画からの立ち上げ
大阪R&Dセンターの14年7月までの開発実績は50アイテムに達した。これについて大山は「80点」の評価を与える。残りの「20点」を加算するための課題は「企画力」だ。「設計に精通している人が企画できれば“鬼に金棒”です。この問題を解決するのには、こう設計したらいいと瞬時にアイデアが浮かんでくる。イチから自分で企画した商品なら、実現への信念も高まるはずです」と大山はいう。
ここもアイリスオーヤマの商品開発が大手メーカーと大きく違う点で、企画の立ち上げを設計者自ら行う。それゆえ大半の中途社員は戸惑いを隠せず、調理家電を担当している犬飼も「企画はまだ苦手です」と正直に話す。
同社では「ユーザーイン」という言葉をよく使うが、消費者の声に常に耳を傾けて、小さな不満を解消するための商品開発に徹することを意味する。前出の原は「生活者の目線で『あれが欲しい』『これが欲しい』というニーズを読み取っていけばいい。あとは慣れの問題でしょう」と心配していない。
しかし、消費者の不満を探すコツを口で説明しても、なかなか伝わらない。先に常務の大山が月に2回は大阪に出向いていることを紹介したが、その目的の一つが、どう企画を発想するか、一緒にやってみせることなのだ。
「掃除機なら自社と他社のモノを揃え、一つひとつ実際に掃除をしてみて、『これだと部屋の隅の掃除がしにくい。どうしたら改善できるか』などの意見を出し合います。そうやって浮かび上がった問題点の解決策を、具体的な企画に落とし込むのです」と大山は語る。