プロパーも認める豊富な知識と経験

(左)家電開発部マネージャー 原英克氏 (右)家電開発部大阪R&Dセンターマネージャー 淡路雄一氏

ところで、受け入れ側の開発担当のプロパーは、大阪R&Dセンターの中途社員をどう評価しているのだろう。

前出の淡路は、大阪R&Dセンターに赴任する前は角田で調理家電のマネージャーを務め、ノンフライ熱風オーブンの開発で入社早々の西谷とタッグを組んでいた。その淡路が技術者としての西谷を評して次のように話す。

「おいしい揚げ物料理ができるようにするのには、秒速何メートルの風が必要で、それを測定するのにはどうしたらよいのかを教えてもらったり、とても助かりました。具体的にいうと、棒にティッシュをつけてオーブンのなかに入れて、風の方向を見るのです。単純ですが、そういった可視化の方法があるなんて考えもしませんでした」

また、角田でIHクッキングヒーターや掃除機などの開発のマネージャーを務めているのが原英克で、家電関係の開発では最古参のスタッフ。その原がいまでも一緒に仕事をしている大阪の犬飼についてこう語る。

「IHクッキングヒーターの温度を感知するためには、どこの場所を測定したら一番効率的なのかを熟知しています。また、特許に関する知識もたくさん持っており、この技術は他社の特許とぶつかるから利用できないということを、調べるまでもなく教えてもらえ、スピーディーに開発が進められます」

「問題解決」「値ごろ感」とともにアイリスオーヤマの商品開発の“鉄則”なのが、社長の大山の最終的なOKが出てから市場に投入するまでの「時間」。日用品は約3カ月、家電だと約半年。大手家電メーカーなら、通常1年から1年半はかける。だから、それを初めて聞いた中途社員は度肝を抜かれる。

「スピード化を図っていくうえでは、どのようにしたら失敗してしまうかを知っている人間がいることの意味はとても大きいと思います。彼らの経験や知識を融合することで、開発の速度が格段にアップしているのは間違いないでしょう」と研究開発を束ねる常務の大山も評価する。