世界地図の中で自分の魅力をプロットできるか

独立が否決されたものの、スコットランドの住民投票が世界の分離独立運動に与えた影響は大きい。

まず同じく英連邦を形成するウェールズや北アイルランドでも、スコットランド並みの自治権拡大を求める声が強まるだろう。近隣のヨーロッパ諸国でも中央政府からの分離独立を目指す動きが活発で、スペインのカタルーニャやバスク地方、ベルギーのフランドル地域、イタリア北部などで独立運動が勢いづいている。

実際、11月9日に独立の是非を問う住民投票が行われることになっているスペインのカタルーニャ自治州では興奮状態が続いている。カタルーニャはスペイン語を否定して、独自のカタラン語教育を小学校で徹底するほど独立志向が強い。住民投票をすれば7対3で独立派が勝つだろう。それだけにスペイン政府はカタルーニャの住民投票を「憲法違反」として絶対に認めない構えだ。

影響はヨーロッパだけに留まらない。カナダにおけるフランス語圏であるケベック州では、過去に2度、80年と95年に分離独立の是非を問う住民投票が行われた。いずれも独立反対派が僅差で勝っているが、3度目の住民投票に向けた動きが出てくるかもしれない。イラク北部のクルド人自治区でも独立機運が高まっている。クルド人は独自国家を持たない世界最大の民族で、隣国のトルコにも1400万人のクルド人がいる。

もしイラクのクルド人自治区が独立国になれば、クルド人が多いトルコの東側地域でトルコからの分離独立、クルド人国家編入を求める動きが出てきても不思議ではない。要するに、ウクライナから独立してロシアに編入されたクリミアと同じケースだ。そうなれば中東の大国トルコは大混乱に陥るだろう。チベットや新疆ウイグル、内モンゴルの分離独立問題を抱える中国、民族自治区や自治共和国の独立問題を抱えるロシアなどは当然、警戒感を強めている。

日本が影響を受けて分離独立問題に火がつくとすれば沖縄ということになるのだろうが、政府の助成金に首までつかっている沖縄とスコットランドでは話の次元が違う。

地域国家論を唱えている私にいわせれば、中央政府との対立というドメスティックな図式で捉えているようでは、分離独立しても成功はおぼつかない。

独立した地域が世界からヒト、カネ、モノをいかに誘致して繁栄するか、すなわち中央政府との葛藤ではなく、世界地図の中でいかに自分の魅力をプロットできるかという視点、構想力を持てるかどうかが重要になってくる。

その見通しがなければ、東ティモールやコソボのように独立して国家としては認められても、どこかに寄生しなければ生きていけない。スコットランドはおそらくうまく生きていけたはずの数少ない事例だった、ということになるだろう。

(小川 剛=構成 ロイター/AFLO=写真)
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