スコットランド国民党が議会のマジョリティを得たからには、議会で独立宣言を決議してしまうこともありえる。

それだけは何としても避けるために、キャメロンとしては「じゃあ皆に聞いてみたら」と住民投票を認めるのが当時の知恵だったわけだ。しかしサモンド首相以下、独立派の煽り方も上手かった。「独立したら仕事は自分たちでつくれるから、雇用が増える」「北海油田の8割は自分たちのものになる」などと訴えて独立賛成派を徐々に増やし、投票前の世論調査では賛成派と反対派はほぼ互角、一時的には賛成派が反対派を若干上回るまでに。

慌てたのは英国政界である。投票直前には保守党党首であるキャメロン首相、エド・ミリバンド労働党代表、ニック・グレッグ自由民主党代表の3党首がスコットランド入りして、各地で独立反対の演説を行った。トニー・ブレアやゴードン・ブラウンらスコットランド出身の首相経験者も現地に乗り込んで、「我々はもっと自治権を勝ち取る。分かれて苦難の道を歩むことはない」と訴えた。

後から振り返れば、独立賛成派がリードするタイミングが早すぎたように思う。反対派優位のまま住民投票に突入していたら、賛成派が勝った可能性もある。今回の投票率は84.6%。危機感を持っていなければ、投票に行かない反対派は少なくなかっただろう。対して賛成派は“生涯唯一のチャンス”である投票に絶対行くはずだったからだ。