――昨年4月にスタートしたにしては、サービスをつくり、発表するまでのスピードがとても速いように感じました。

【南場】弊社にとってこのスピード感は普通です。ゼロから積み上げなくてはならない部分が多かったのは確かですし、非常に大きな取り組みであると思っていますが、これくらいのスピード感でできない会社はダメだと思います。ただ、この事業に関しては、私だけではなく、チームの社員それぞれがいろいろな思いを抱えており、その思いがスピードを速めた要素の一つになっているかもしれません。

――DeNAだからこそできること、やるべきことはどんなことでしょうか。

【南場】弊社は一般大衆向けサービスが得意な会社です。また、エンターテインメントとコミュニティ、データマイニングにも強みがあります。

健康をすごくまじめでつまらないものにしてしまうと、気を付けようと思っても、健康に留意したアクションが長続きしないと思うんですね。私たちは普段から健康の大切さに気づいてほしいという思いでサービスを立ち上げましたから、病気になる前の人が健康的なアクションを続けたり、意識を持ち続けたりできる、楽しく利用できるようなエンターテインメント性を取り入れたいと思います。

たとえば、コミュニティビジネスも弊社の柱の一つですが、人が支えあいながら続けていくといった、DeNAならではのサービスがあるはず。今回はまだ入り口ですから、DTCの遺伝子解析サービスというシンプルな商品になっていますが、今後、弊社ならではのエンターテインメント性を付け加えていこうと考えています。

さらに、情報提供を承諾してくださるユーザーさんのデータを研究に活用していくことも考えています。データマイニングが得意な我々なら、ビッグデータ解析につなげていけるでしょう。

――収益目標はありますか。

【南場】収益の数字は言わないようにしています。それが、この事業のチームの足を引っ張ることになったらいけませんから。世の中に貢献するサービスをしっかりつくること、その結果として弊社が儲かること。そういう順番です。ただ、この1年で大きな黒字にするといった目標は持っていません。数年がかりで事業の価値を認めていただけるような体制で、丁寧に取り組んでいきます。

――「MYCODE(マイコード)」はメニューに応じて35項目10584円、100項目21384円、283項目32184円、という思い切った価格設定です。

【南場】私のおすすめは、やはり283項目のサービス。これだけの項目の検査ができてこの価格には自信があります。10584円のメニューも作ったのは、お試ししやすい価格であることに加えて、あまり病気についてたくさんの情報を知りたくない方もいらっしゃるかな、と思ったからです。そういう方が、試しにご自分の疾病リスクを知るきっかけになればうれしいなと思っています。

ディー・エヌ・エー取締役 ファウンダー 南場智子 
新潟市生まれ。津田塾大卒業。90年米ハーバード大MBA。96年マッキンゼーでパートナー就任。99年DeNAを創業。11年病気療養中の夫の看病に力を注ぐため、代表権のない取締役となる。
(島田祥輔、中沢明子、プレジデント編集部=文・構成 浜村多恵、和田佳久、市来朋久、坂本道浩、交泰、相澤 正、的野弘路=撮影)
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