今回はまだ「入り口」にすぎません
――「第2の創業」という今回の遺伝子解析サービスですが、社名と関連はありますか。
【南場】まったくの偶然です(笑)。昔から考えていた、と言えたらかっこいいのですが、事実が違いますから、事実を申し上げなければなりません。具体的には、社長を退任して2年のブランクののち、昨年4月に私が現場復帰をしてから進めたプロジェクトです。
弊社はインターネットオークションから始まって、ゲームの「モバゲー」など次々と新事業の柱を追加し、成長してきた企業。柱を乗り換えるのではなく、追加してきた、という部分がポイントです。
ITやインターネットを活用したイノベーションを起こしていくのが弊社のスタンスで、常に新たな市場で事業を立ち上げたいという思いを持っています。その中で医療ヘルスケアにも大きな関心を持っていました。非常に有望な領域ですからね。
――社長退任は病気になられたご家族に付き添う、という理由でした。やはり、その経験が直接のきっかけですか。
【南場】そうですね。もちろん、「健康って大事だよね」と思っていましたし、国家的な医療費の増大についても認識していました。けれども、体が丈夫で健康検査も受けていた夫が、それでも重い病に倒れたとき、痛感したんです。それまでは、わかっているつもりでも、どこか他人事だったのかもしれません。本当に失ってみないとわからないんですよね、健康って。
おかげさまで、夫の病状は回復して私も復帰できましたけれど、健康の大切さ、病気のリスクにもっと早く気づいてくれる人が増えるといいなあ、と心底思いました。それで、休業中にアイデアを温めながら、医療関係者の方々や社員たちとディスカッションを重ね、復帰後、具体的に動きだしました。
自分の疾病リスクを知って、生活習慣で予防できるなら、病気になるのを防げるうえ、国も本人も医療費負担を抑えられる。私たちはセルフメディケーションという言葉を使用していますが、個人が自分の身体の情報をきちんと得て、意思決定できるようにしたい。そうした方向にお役に立てるサービスを目指したいと考えています。