「中国は経済大国として台頭する」と予感

さて、留学先をどこにするか。私は次の3つの基準で決めた。(1)アメリカ南部のサンベルト地帯にある。(2)できるだけ小さい学校。(3)アメリカ人以外の留学生が多いインターナショナルな校風をもったところである。なぜなら、日本では経験できないことを学びに行く。それなら、気候が温暖で、密度の濃い人的交流ができ、グローバルな多様性も体感できるほうがいい。結果、選んだのがアリゾナ州にあるサンダーバード経営大学院だった。

この選択は正解だったと信じている。開放的なキャンパスで、世界各国から多種多様な留学生が来ている。その6割以上が寮に寄宿し、授業以外で触れ合う機会も多い。加えて、教授たちも留学生に親切だった。私は、どんなパーティーにも顔を出した。好きなゴルフも仲間を誘ってグリーンを回った。そちらにエネルギーを割いたためか、修了時の成績は、歴代留学生でも最低だった。けれども、悔いはまったくない。最高の経験をさせてもらったと思っている。

ここでは英語、母国語のほかに、もう1カ国の言葉を学ばなければいけない。私は中国語を選んだ。当時、エズラ・ヴォーゲルという社会学者が書いた『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーになって、日本が過大に評価されていた。だが私は、ニクソン大統領の中国訪問から「近い将来、中国が経済大国として台頭するのではないか」と考え、中国語を学ぶことにした。

担当教授は台湾出身の女性で、いまでも相互に行き来している。そして、その成果が後年、中国ビジネスで役立つ。私が渡米した1978年、トウ小平率いる中国では改革開放路線が採択され、市場志向型の経済に大きく舵を切っていった。その後のGDPがアメリカに次いで2位になる発展ぶりは周知のとおり。当社としても、またシェルグループ全体から考えても有力なマーケットになっていく。

香藤繁常(かとう・しげや)
1947年、広島県生まれ。県立広島観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。
(岡村繁雄=構成)
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