出光興産と昭和シェル石油が進める統合計画が暗礁に乗り上げた。合併反対の創業家が打ち出した「奇策」はどんな結果をもたらすか――。

創業家があえてとった合併阻止の奇策

昭和シェルと経営統合を反対する出光興産の創業者一族が動き出した。

8月3日、出光名誉会長の代理人、浜田卓二郎弁護士が開いた記者会見。

出光興産が昭和シェル石油の筆頭株主である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから相対取引で引き受けることになっている1億2526万1200株(33.23%)の株式の売買を阻止するために、出光昭介・出光興産名誉会長が市場から40万株(0.1%)を取得した。

取得する株式が3分の1(33.33%)を超える場合にはTOBをかけなければならないことになっている。それには形式的特別関係者が所有する株式も含まれ、出光興産の株式を20%以上保有している出光名誉会長は形式的特別関係者にあたる。ロイヤルダッチシェルの保有する33.23%と出光名誉会長の保有株式0.1%を合わせると3分の1を超える(33.345%)。

出光興産は昭和シェルの株式を1691億円で取得することになっているが、TOBで全株式を取得することになれば5000億円以上の資金が必要となってくる。

出光名誉会長の代理人、浜田卓二郎弁護士が8月3日に開いた記者会見では「昭介氏らは今回の取得にとどまらず、今後、出光興産が本買い付けのとりやめを発表するまでの間、追加して取得することも視野に入れています」と創業家の決意のほどを説明した。

出光興産との合併に合意している昭和シェル側もTOBについては「統合の目的は強い会社をつくること。TOBをかけるというのはさらに借金を増やすことになり、それは本来の目的とは違う」(昭和シェル石油広報担当者)と難色を示している。

昭和シェルは2014年12月20日付の日本経済新聞で出光興産がTOBをかけると報じられた。 出光興産の広報担当者は「TOBというのは日本経済新聞の誤報。経営統合について検討していたのは事実です。その議論がずっと続いていた」と語るが、昭和シェル側では明確な答えを避けている。実はこれをきっかけにして昭和シェルでは特約店が大混乱した。それだけにTOBという言葉にはアレルギーをもっている。